体操競技における女子器械種目の一つ(段違い平行棒運動)。また、その器械名。床面から高棒250センチメートル、低棒170センチメートルの高さに平行に固定された長さ240センチメートルの2本の棒(バー)からなり、それぞれ棒端は支柱で支えられている。高棒と低棒の間隔は130~180センチメートルの範囲で自由に調整できるようになっている。支柱は男子のつり輪や鉄棒と同様、床上に4本のワイヤーで固定される(実際には高棒と低棒を結んだワイヤーが滑車によって1本にまとめられ床上に固定。この部分で張力の調整が可能となっている)。使用するマットの厚さは20センチメートルである。1964年(昭和39)の第18回オリンピック・東京大会までは、男子平行棒とまったく同じ棒が用いられていたが、その後は、横向きの振動・回転技に都合がよいように変更された。
棒は折れにくいようにグラスファイバーあるいは鉄の芯(しん)を入れた木製。男子平行棒に比べて短く、断面は円形となっている(男子平行棒は楕円(だえん)形)。この棒の形状改良によって段違い平行棒の演技内容は、男子鉄棒の演技内容とほとんど似通ったものに発展した。
演技は懸垂振動系、支持振動系の技を中心に停止することなく、高棒、低棒の周りや、両棒間を最大限に使用して、回転、振動(体を振る)、宙返り、ひねり技、両棒間の移動(手放し技)などで構成する。演技時間に制限はない。
この種目は比較的歴史が浅く、1936年の第11回オリンピック・ベルリン大会において、初めて団体総合の規定演技として採用されたが、当時は、器械の構造上の問題から棒に対して縦向き体勢での運動が中心で、静止ポーズの連続という演技傾向であった。1950年代になって鉄棒の技が導入され、横向きの体勢の技が増え、1960年代以降はその傾向が顕著になり、器械構造(棒の形状)の改良もあって、しだいにダイナミックな振動技主流の演技内容に発展してきた。1952年の第15回オリンピック・ヘルシンキ大会よりオリンピック種目(種目別)となった。
[三輪康廣・後藤洋一 2020年2月17日]
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…そこには,20世紀初頭から,伝統的体操の形式主義を否定し,人間の心身の解放を唱えて台頭してきた新しい体操の影響をうかがうことができ,学校での体操も見直しの時代を迎えている。学校体育【中森 孜郎】
【体操競技】
体操競技は国際体操連盟(FIG)に帰属するスポーツ種目の一つで,男子6種目(ゆか,あん馬,つり輪,跳馬,平行棒,鉄棒),女子4種目(跳馬,段違い平行棒,平均台,ゆか)から成っている。体操競技においては男女とも,それぞれの器械種目で演技することによって団体総合,個人総合,種目別の別で競われる。…
※「段違い平行棒」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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