日本の国有鉄道(国鉄)で、駅舎の建設・改良にあたり民間から資金提供を受けるかわりに、出資者のテナント利用を許容した駅または駅施設。第二次世界大戦後の復興に際して国鉄の資金を節約すべく導入された方式で、発案者は国鉄職員だった立花次郎(たちばなじろう)(1907―1979)とされる(『駅のはなし』)。
1950年(昭和25)、東海道本線豊橋(とよはし)駅舎が最初の民衆駅として完成し、以後全国66駅が民衆駅として整備された。いわゆる駅ビルも多く含まれ、運営会社として鉄道会館などが設立された。国鉄は日本国有鉄道法(昭和23年法律第256号)により駅ビル運営企業への出資が規制されていたが、1971年の同法施行令改正により投資事業範囲が拡大されてのちは、駅ビル経営に積極的に乗り出した。この結果、ショッピング・センター、ホテル、駐車場などの機能を複合させた旅客ターミナルビルの建設が進んだ。
1987年の国鉄分割民営化によってJR各社が発足した後は、民衆駅の概念も必然的に消滅したが、駅構内における商業施設経営はますます拡大し、近隣の小売業者との競争摩擦や税負担の不均衡問題を惹起(じゃっき)した。これを受けて総務省は2007年(平成19)、鉄軌道用地内での商業施設に対する固定資産税評価基準の見直しを実施し、それまで鉄道施設として低額に抑えられていたのを改め、商業施設の存在を勘案して評価することとなった。他方、地方線区においては駅施設の整備にあたりJR各社が沿線の地方自治体に費用負担を要求するケースが出現している。これは国鉄時代に新幹線駅で採用された「請願駅」方式(地元の要望と費用負担で新駅を建設する)に近く、駅施設の費用負担をめぐる仕組みは多様化している。
[高嶋修一]
『藤原千晴編集事務所編集『素描・太田和夫』(1991・建築家会館)』▽『交建設計・駅研グループ著『交通ブックス104 駅のはなし――明治から平成まで』(1997・成山堂書店)』
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… 上記の分類とは別に,次のようなJRの駅がある。(1)民衆駅 駅舎を新築または増改築する場合に,その一部を鉄道業者以外の民間が使用することを前提として,民間資本の導入を得て建築した駅およびその他の施設の総称。第2次大戦後,戦災を受けた駅舎の復旧にあたり,駅舎自体を旅客の乗降だけでなく,さらにひろく都市再開発の中心とすることが鉄道側,地元側双方に有利であることから導入されたもので,日本国有鉄道では1950年の東海道本線豊橋駅がその第1号である。…
※「民衆駅」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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