天王寺(読み)テンノウジ

百科事典マイペディアの解説

天王寺【てんのうじ】

摂津四天王(してんのう)寺周辺に形成された中・近世都市。上町(うえまち)台地にあり,北方には難波(なにわ)宮跡がある。飛鳥(あすか)時代〜奈良時代の当地では,四天王寺の創建や,難波の百済(くだら)寺に比定される堂ヶ芝(どうがしば)廃寺,摂津国分寺と伝えられる国分寺の創建があった。平安時代になると四天王寺参詣が盛んとなり,同寺周辺は都市的景観を呈するようになる。また住吉社(住吉大社)や熊野・高野(こうや)などへの参詣も盛んになり,熊野街道筋にあたる当地は賑いをみせた。さらに平安末からの浄土信仰の盛行により,四天王寺西門や西門に続く夕陽丘(ゆうひがおか)が西方浄土を憶念する霊地として知られるようになり,貴賤が参集した。南北朝期になると交通の要地であった当地はたびたび戦乱に巻込まれた。なかでも1333年の楠木正成(まさしげ)と六波羅方の合戦では多くの在家が焼亡,以降もたびたび合戦があった。また戦国末には織田信長により天王寺城が築かれ石山合戦の主戦場の一つとなり,大坂の陣では茶臼(ちゃうす)山に徳川家康本営が置かれた。このように南北朝期以降,当地一帯は度重なる戦火を受けたにもかかわらず商工業は着実に発展し,都市化が進んだ。1187年〈天王寺檜皮大工〉11人が勝尾寺(現大阪府箕面市)造営工事を担当しており,1245年にも天王寺の大工が同寺の塔婆葺替えに従事している。石工の活動も知られており,また各種の手工業製品(藺・藁細工,蘆簾など)の生産に携わる職人の活動も盛んであった。室町時代中ごろには三条西家を本所とする〈天王寺青苧(あおそ)座〉の活躍が著名になる。彼らは越後まで青苧の買付けに出かけ,青苧から繊維を取り,織物を作って販売した。15世紀後半には〈天王寺浜市〉が繁栄し,各地から食料品・日常生活品・衣料品・生産用具・武具・唐物などが持ち込まれて売買された。このころには〈天王寺ハ七千間在所〉(《大乗院寺社雑事記》)といわれるほど人家が密集していた。近世には周辺の農村地帯と合わせて〈天王寺村〉として高付けされ,正保(1644年−1648年)ころには村高5561石余,延宝検地高は7615石余。大坂城下の建設期には一時的に都市機能は衰退したとみられるが,その後の大坂市中の拡大に伴って大坂三郷に南接する地として,また阿部野街道(熊野街道)や紀州街道が通る交通の要地として都市的景観を回復,〈村〉扱いながら30近い町が成立して〈家戸数千軒有,農工商交居〉(宝暦2年《天王寺管内地図》)といわれるようになった。鋸(のこぎり)や綿の加工器械である攪車(わたくり),草履などが生産され,商業では実綿・繰綿の取引が盛んであった。さらに牛市や植木市も賑わった。牛市は16世紀末に開設されたと伝え,主宰者の石橋家は摂河泉播4ヵ国の牛売買権をもち,18世紀末近くまで中断期を除いて畿内最大の牛市であった。天王寺村は1889年阿部野村(現大阪市阿倍野区)と合併して新〈天王寺村〉となり,1897年北半が大坂市区に編入,1925年増区により北半とともに南半も天王寺区に編入。
→関連項目平野郷

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世界大百科事典 第2版の解説

てんのうじ【天王寺】

大阪市天王寺区の一部の旧地名。はじめ摂津国百済郡,のち闕郡を経て1685年(貞享2)東成郡に属した。四天王寺の所在地であるため,古来天王寺という。古くから竹内街道,西高野街道,熊野街道などの通過する交通の要地で,南北朝時代には1332年(元弘2)の天王寺合戦以来たびたび南北両軍の争奪のまととなった。石山合戦(1570‐80)のときには,織田信長軍の砦が築かれ,石山本願寺攻略の一拠点となった。豊臣秀吉の大坂築城後は,外構えとして重要視され,大坂の陣では徳川家康の本営が置かれた。

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大辞林 第三版の解説

てんのうじ【天王寺】

四天王寺してんのうじのこと。
◇ 大阪市南部の区名。四天王寺や天王寺公園がある。

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世界大百科事典内の天王寺の言及

【四天王寺】より

…大阪市天王寺区にある寺。荒陵山と号し,荒陵(あらはか)寺,天王寺ともいう。…

※「天王寺」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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