魚類から採取して得られる脂肪油。通常,イワシ,ニシン,サンマなどの大量に捕獲される魚種を原料とする。魚油の名称はしばしば海産動物油と同意語として用いられる。魚油は固体酸としてはパルミチン酸,少量のステアリン酸,ミリスチン酸,アラキジン酸等を,また液体酸としてオレイン酸等を,ほかに高度不飽和脂肪酸を含有し,また特有成分としてヘキサデセン酸を含む。他の油に比べて組成脂肪酸の種類がきわめて多く,また不ケン化物含量も大きく,独特な生ぐさい不快臭をもつ。魚油の高度不飽和脂肪酸は容易に空気中で酸化され,悪臭の原因となる。そのため精製脱臭後もしばらく空気中に放置すると,また臭気を放つ。魚油を利用する一つの方法として,工業的にはこれら不飽和脂肪酸を水素添加する。この工程を硬化といい,その製品を硬化油という。硬化には通常,金属ニッケル触媒を用いる。硬化後は油は酸化に対して安定になり,悪臭を放たなくなるが,融点は上昇して常温付近になる。魚油は不飽和度の高いわりには乾燥性に劣る。おもに硬化油としてマーガリン,ショートニング,あるいはセッケン原料として用い,魚油そのままでは製革用油,重合油,ボイル油,低級塗料用油とされる。最近,魚油中の高度不飽和脂肪酸,たとえばエイコサペンタエン酸(EPA)が高血圧,老化の防止に有効であることから,健康食品として注目されている。
執筆者:内田 安三
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イワシ、サバなどから得られる脂肪油。含油量は一般に15~20%である。細分し蒸し煮した魚を、圧搾して採油するが、収率は不安定である。魚油は高度不飽和脂肪酸(1分子中に二重結合を4、5あるいは6個含有している)を30%程度含んでおり、それらの炭素数は18、20あるいは22である。ヨウ素価は180程度。なお、かなりの量の飽和脂肪酸とモノエン酸(二重結合を1個含有)を含む。このために魚油の乾燥膜の性状は劣る。冷却濾過(ろか)した魚油は塗料に用いうるが、品質はよくない。かなりの量のモノエン酸を含むからである。脱臭、水素添加油は食用油脂工業に用いられる。また、せっけん、ペイント、印刷インキ、製革に使用される。
なお、魚油とは別途に取り扱われるタラあるいはサメの肝油は、溶出法により採油され、ビタミンAとDを含み、医薬品となる。サメの肝油はスクアレンを含む。
[福住一雄]
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