トンネル建設工法の一つで,海や川の水底にトンネルをつくるのに用いられる。トンネルを形成する外殻をあらかじめ陸上または船台上で適宜の長さに分割して製作し(両端を仮壁でふさいだ函状をしており,沈埋函と呼ばれる),一方,設置する水底は溝状に浚渫して基礎をつくっておく。沈埋函は沈設予定位置直上まで水上を運搬し,1個ずつ順次に沈め,函相互は水中で水密に接続していき,トンネル内の仮壁の撤去や内装,トンネル外の土砂による埋戻しを行って完成する(沈埋工法によるトンネルを沈埋トンネルという)。沈埋函には,鉄筋コンクリートで函形をつくる方式や,鋼殻方式といって,鋼で外殻を函形または円筒状につくり,水中に据え付けたのち,外殻内にコンクリートを打ち込む方法がある。
沈埋工法は1893年,アメリカのボストン港内の幅96mの航路下に下水用トンネルをつくる際に初めて用いられたが,本格的なものとしてはデトロイトの川底に80mの沈埋函10基を用いたセントラル鉄道用トンネルが最初である。1964-69年,サンフランシスコ湾底にBART(バート)のための複線鉄道トンネル(延長5820m)がつくられ,これがこの工法の最長記録。ヨーロッパでは,1927年ドイツのフリードリヒスハーフェンにおける歩道用トンネルをはじめ,64年完成のオランダのマース・トンネル(4車線道路用,長さ600m)など数多くの例がある。日本では,1944年大阪の安治川川底につくられたのが最初で,最近では羽田海底(道路用とモノレール用),堂島川,道頓堀川(大阪地下鉄用),多摩川,京浜運河,台場(鉄道建設公団京葉線),川崎港,扇島,衣浦,東京港トンネル(いずれも道路用)など急増している。
執筆者:吉村 恒
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…水底トンネルは青函トンネルのような海底トンネルを除けば,大多数は河口近くの大都市に作られ,地質も軟弱な場所が多い。
[施工方法]
水底トンネルの施工法には山岳トンネルを掘削するのと同様な普通工法と,開削埋戻し工法,空気ケーソン工法,圧気シールド工法,沈埋工法などの軟弱地盤にも適する特殊な工法とがある。普通工法は湧水を止めるために地山の裂け目をふさぐ防水剤の注入を併用することが多く,地質が軟弱でなく,岩質な地山に適用される。…
※「沈埋工法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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