沈埋工法(読み)チンマイコウホウ(その他表記)trench method

デジタル大辞泉 「沈埋工法」の意味・読み・例文・類語

ちんまい‐こうほう〔‐コウハフ〕【沈埋工法】

水底トンネル工法の一。箱状に区分して製造しておいたトンネル部分水底に掘った溝に沈め、順次に接続してトンネルをつくる方法

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「沈埋工法」の意味・読み・例文・類語

ちんまい‐こうほう‥コウハフ【沈埋工法】

  1. 〘 名詞 〙 水底トンネル建設工法で、鉄筋コンクリート製または鋼鉄製のトンネルを陸上でつくり、あらかじめ掘っておいた水底の溝に埋め、土砂をかぶせるもの。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「沈埋工法」の意味・わかりやすい解説

沈埋工法 (ちんまいこうほう)
trench method

トンネル建設工法の一つで,海や川の水底にトンネルをつくるのに用いられる。トンネルを形成する外殻をあらかじめ陸上または船台上で適宜の長さに分割して製作し(両端を仮壁でふさいだ函状をしており,沈埋函と呼ばれる),一方,設置する水底は溝状に浚渫して基礎をつくっておく。沈埋函は沈設予定位置直上まで水上を運搬し,1個ずつ順次に沈め,函相互は水中で水密に接続していき,トンネル内の仮壁の撤去や内装,トンネル外の土砂による埋戻しを行って完成する(沈埋工法によるトンネルを沈埋トンネルという)。沈埋函には,鉄筋コンクリートで函形をつくる方式や,鋼殻方式といって,鋼で外殻を函形または円筒状につくり,水中に据え付けたのち,外殻内にコンクリートを打ち込む方法がある。

 沈埋工法は1893年,アメリカのボストン港内の幅96mの航路下に下水用トンネルをつくる際に初めて用いられたが,本格的なものとしてはデトロイト川底に80mの沈埋函10基を用いたセントラル鉄道用トンネルが最初である。1964-69年,サンフランシスコ湾底にBARTバート)のための複線鉄道トンネル(延長5820m)がつくられ,これがこの工法の最長記録。ヨーロッパでは,1927年ドイツのフリードリヒスハーフェンにおける歩道用トンネルをはじめ,64年完成のオランダマース・トンネル(4車線道路用,長さ600m)など数多くの例がある。日本では,1944年大阪の安治川川底につくられたのが最初で,最近では羽田海底(道路用とモノレール用),堂島川道頓堀川(大阪地下鉄用),多摩川,京浜運河,台場(鉄道建設公団京葉線),川崎港,扇島,衣浦,東京港トンネル(いずれも道路用)など急増している。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「沈埋工法」の意味・わかりやすい解説

沈埋工法
ちんまいこうほう

海底トンネルの工事方法の一つ。巨大なコンクリート製の箱を海底に並べて海底トンネルを造るプレハブ工法で,地盤が弱く大口径のトンネルを掘ることが困難な場合に用いられる。アメリカやオランダ,日本 (東京港トンネル) で取り入れられている。東京湾岸道路の多摩川河口部と川崎港出入路の2ヵ所で使われている。高さ 10m,幅 40m,長さ 130m,重さ5万 2000tのブロックをドックで完成後,出入口を鉄の扉で閉め切り,タグボートでえい航して水深約 20mの現場に沈めてつなげ,6車線の道路と避難用通路などを通す。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「沈埋工法」の意味・わかりやすい解説

沈埋工法【ちんまいこうほう】

水底トンネルの一工法。まず水底に溝を掘り,基礎を作る。水底トンネルとなる部分は鋼・鉄筋コンクリート製の適当に分割した函(かん)で,両端を仮壁で閉じて現場まで水上を曳航(えいこう)し,注水して基礎の上に沈める。沈設した函を順次継ぎ合わせ,溝を埋め戻し,水を抜いて完成する。日本では大阪市の安治川トンネル(1944年)が最初。
→関連項目トンネル

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典(旧版)内の沈埋工法の言及

【水底トンネル】より

…水底トンネルは青函トンネルのような海底トンネルを除けば,大多数は河口近くの大都市に作られ,地質も軟弱な場所が多い。
[施工方法]
 水底トンネルの施工法には山岳トンネルを掘削するのと同様な普通工法と,開削埋戻し工法,空気ケーソン工法,圧気シールド工法,沈埋工法などの軟弱地盤にも適する特殊な工法とがある。普通工法は湧水を止めるために地山の裂け目をふさぐ防水剤の注入を併用することが多く,地質が軟弱でなく,岩質な地山に適用される。…

※「沈埋工法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android