日本大百科全書(ニッポニカ) 「沖永良部台風」の意味・わかりやすい解説
沖永良部台風
おきのえらぶたいふう
1977年(昭和52)9月9日夜に、沖縄の南海上から北上して沖永良部島を直撃した台風第9号のこと。最盛期の気圧は905ヘクトパスカルで、その強い勢力のまま通過したため、同島では最低海面気圧の日本記録(陸上)907.3ヘクトパスカルを観測した。瞬間風速が60メートルを超す暴風雨により、島内のおよそ半数にあたる2600棟の住家が全半壊した。台風はその後西進し、中国大陸に上陸して衰弱した。
気象庁では、台風9号が北上して九州上陸という予報をしたが、予想に反し、東シナ海を西へ進み、中国の揚子江(ようすこう)河口付近に上陸した。これは、朝鮮半島から東シナ海へ南下している上空の低気圧と台風9号が「藤原の効果」を起こし、日本東方の太平洋高気圧が急速に勢力を強めて西に張り出してきたためである。このとき、東シナ海で漁船が多数台風に巻き込まれた。同じ年の7月14日にアメリカで打ち上げられた日本初の静止気象衛星「ひまわり」が最初の画像を送ってきたときに映し出されたのがこの台風で、台風が沖縄の南海上に位置していた9月8日のことである。このとき「ひまわり」の運用が始まっていれば、もう少し台風予報がうまくいったのではないかとの指摘があり、「ひまわり」の機能チェック作業などのスケジュールが前倒しとなり、予定より早い11月4日に宇宙開発事業団(現、宇宙航空研究開発機構)から気象庁に運用が移管された。
[饒村 曜]