沖縄にある私立の大学院大学。英語の頭文字からOIST(オイスト)と略称する。2001年(平成13)、内閣府特命担当大臣(沖縄・北方対策、科学技術政策担当)の尾身幸次(おみこうじ)(1932―2022)が提唱し、2012年に開学した。ノーベル賞受賞者らの提言を受け、生命科学を中心にした基礎研究に重点を置く学際的な5年一貫制(博士課程)の研究・教育拠点である。学生や研究者の半数以上が外国人で、公用語は英語(研究、講義はすべて英語で行う)。第二次世界大戦で戦場となり、現在も多くのアメリカ軍基地が残る沖縄の振興を目的とした政治色の強い大学院大学で、独立したガバナンスをとるため私立大学の形態をとるが、沖縄科学技術大学院大学学園法(平成21年法律第76号)に基づく特別な大学である。所管は文部科学省ではなく内閣府で、運営・施設整備費(年間約200億円)のおよそ9割を政府補助でまかなっている。
「世界最高水準の研究大学」を目標に掲げ、沖縄振興と世界の科学技術発展に寄与することを目的とする。本部は沖縄本島中部の恩納村谷茶(おんなそんたんちゃ)。理事会はノーベル賞受賞者らで構成。2021年(令和3)時点で、研究分野は分子・細胞・発生生物学、神経科学、環境・生態学、海洋科学、数学・計算科学など八つに大別され、82の研究ユニットがある。世界50以上の国・地域の約1000人が所属し、教授・准教授ら教員は82人、博士課程学生は226人、博士研究員(ポスドク)は469人。学長は初代が南アフリカの物理学者ジョナサン・ドーファンJonathan Dorfan(1947― )、2代目がドイツの分子生物学者ピーター・グルースPeter Gruss(1949― )である。科学誌『ネイチャー』を発行するシュプリンガー・ネイチャー社が2019年に発表した世界の科学論文の質ランキング「ネイチャー・インデックス」で世界9位(東大40位、京大60位)。補助金頼りの運営財源を補うため、2018年には、寄付金集めのためのOIST財団をニューヨークに設立した。
[矢野 武 2021年10月20日]
2011年(平成23)に開設。2001年に尾身幸次内閣府特命担当大臣(沖縄・北方対策,科学技術政策担当)が沖縄科学技術大学院大学構想を提唱したことに端を発する。学士課程を設置せず,5年一貫性の博士課程を置く大学院大学であり,世界最高水準の教育と研究を行うことで,沖縄の振興と自立的発展および世界の科学技術の向上に寄与することを目的とする。2017年1月現在,沖縄県国頭郡恩納村にキャンパスを構え,35ヵ国134人の博士課程学生が在籍する。基本コンセプトとして,世界最高水準,柔軟性,国際性,世界的連携,産学連携を掲げており,学生と教員の半数以上は外国人,教員対学生の比率は1:2,英語を公用語とした教育と研究が実施されているといった特徴を有す。
著者: 戸村理
出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報
(2019-11-7)
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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