改訂新版 世界大百科事典 「沙井遺跡」の意味・わかりやすい解説
沙井遺跡 (させいいせき)
Shā jǐng yí zhǐ
中国,甘粛省民勤県にある金石併用期の遺跡。砂丘地帯にあり,東西450m,南北300mで厚さ30cmの灰層と墓葬とからなる。遺物には土器と石器がある。土器は手づくねで質の粗い夾砂紅陶が主であり,土器表面下部には,しばしば製作時のたたき痕である縄文や布文が残っている。特徴的な器形として単耳または双耳の丸底の缶(かん),単耳の桶形杯がある。文様は刻線文,篦文,画文があるが,彩文もあり,紅色で平行線,三角文などが描かれている。石器には打製,磨製があり,器種としては斧,環状石斧,石庖丁,鏃,石錘などがあるが製作は粗末である。このほか,銅刀,銅鏃も出土しており,斉家文化の後を受けた辛店文化や寺窪(じわ)文化と並ぶ金石併用期の文化段階のものである。この遺跡を標準遺跡とする沙井文化は河西回廊の民勤,天祝,永昌などに広がっており,その時期は,中原の殷・周時代に併行すると考えられる。
執筆者:下條 信行
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報