ノンフィクション作家。東京都生まれ。1970年(昭和45)横浜国立大学卒業後、ルポライターとして出発する。1973年プロゴルファー尾崎将司(まさし)(1947― )、政治家河野洋平(1937― )、映画監督山田洋次、指揮者小沢征爾(せいじ)ら各界の若手12人に取材した『若き実力者たち』を発表。1976年、プロボクサーのカシアス内藤(1949― )やマラソンの円谷幸吉(つぶらやこうきち)(1940―1968)ら、栄光をつかめなかった人々を描いた『敗れざる者たち』で注目を集める。『人の砂漠』(1977)では餓死した老女の過去や元売春婦たちの養護施設などをルポルタージュして、そのスタイルを確立していった。1978年、右翼少年による日本社会党委員長浅沼稲次郎刺殺事件を描いた『テロルの決算』(大宅壮一(おおやそういち)ノンフィクション賞受賞)を発表。ステージで演説中、聴衆の目前で起きたこの事件は、その瞬間の写真とともに、多くの人が記憶する。その「誰もが知っている」ということを逆手にとり、犯行に至るまでの少年の心理、時代状況、第二次世界大戦後の日本の政治状況、厳格な自衛官を父にもった少年の家庭など、さまざまな条件を細密に描いた。これにより沢木は日本版ニュージャーナリズムの若き旗手とよばれるようになる。
1981年、カシアス内藤の再起を描いた『一瞬の夏』(新田次郎賞受賞)を発表。「カシアス・クレイ(のちのモハメド・アリ)になれなかった男」として内藤を描いたこのノンフィクションは、当時の若者たちに支持され、この作品から「チャンピオン」(アリス)というヒット曲が生まれる。1984年『バーボン・ストリート』で講談社エッセイ賞受賞。1986~1992年(平成4)ユーラシア大陸を貧乏旅行した紀行文『深夜特急』を発表。この作品に影響されて、デイパック一つでアジアを旅する若者たちが急増したが、それは単に軽薄な流行というよりも、高度経済成長の果てに獲得した物質的豊かさに対して、彼らが疑問や後ろめたさを感じていたことの表れだった。1986年「ロス疑惑事件」の三浦和義(1947―2008)、政治家・作家の石原慎太郎、銀行員・音楽家の小椋佳(おぐらけい)(1944― )らを取材した『馬車は走る』、1989年『敗れざる者たち』の続編ともいうべき『王の闇』を発表。1988年には写真家ロバート・キャパの評伝と作品集『キャパ――その青春』『キャパ――その死』『ロバート・キャパ写真集』を翻訳。その後、無頼派作家檀一雄(だんかずお)について、妻が回顧し語り下ろすスタイルの『檀』(1995)などを発表。2001年(平成13)ブラジルを取材中、搭乗していた飛行機が熱帯雨林に墜落し、その体験を『イルカと墜落』(2002)として発表。2003年第51回菊池寛(かん)賞受賞。2006年『凍(とう)』で第28回講談社ノンフィクション賞受賞。
[永江 朗]
『『オリンピア』(1998・集英社)』▽『『イルカと墜落』(2002・文芸春秋)』▽『『沢木耕太郎ノンフィクション』(2002~2004・文芸春秋)』▽『『凍』(2005・新潮社)』▽『『危機の宰相』(2006・魁星出版)』▽『『若き実力者たち』『敗れざる者たち』『テロルの決算』『馬車は走る』『王の闇』(文春文庫)』▽『『人の砂漠』『一瞬の夏』『バーボン・ストリート』『深夜特急』『檀』『血の味』『杯』(新潮文庫)』▽『『天涯』(集英社文庫)』▽『リチャード・ウィーラン著、沢木耕太郎訳『キャパ――その青春』『キャパ――その死』(1988・文芸春秋)』▽『ロバート・キャパ著、沢木耕太郎訳『ロバート・キャパ写真集』(1988・文芸春秋)』
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