江戸育御祭佐七(読み)エドソダチオマツリサシチ

デジタル大辞泉 「江戸育御祭佐七」の意味・読み・例文・類語

えどそだちおまつりさしち【江戸育御祭佐七】

歌舞伎狂言世話物。3幕。3世河竹新七作。明治31年(1898)東京歌舞伎座初演とびの者の佐七と柳橋芸者小糸との悲恋中心とし、4世鶴屋南北らの「心謎解色糸こころのなぞとけたいろいと」を書き替えたもの。通称お祭佐七」。

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精選版 日本国語大辞典 「江戸育御祭佐七」の意味・読み・例文・類語

えどそだちおまつりさしち【江戸育御祭佐七】

  1. 歌舞伎お祭佐七」の本名題

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改訂新版 世界大百科事典 「江戸育御祭佐七」の意味・わかりやすい解説

江戸育御祭佐七 (えどそだちおまつりさしち)

歌舞伎狂言。世話物。3幕。3世河竹新七作。1898年5月東京歌舞伎座初演。通称《お祭佐七》。お祭佐七を5世尾上菊五郎,小糸を尾上栄三郎(後の6世梅幸)で好演して以来15世市村羽左衛門ら音羽屋系の家の芸として現在に継承される。加賀家の侍倉田伴平は芸者小糸に言いよるが拒絶され,小糸はかねて言いかわす鳶のお祭佐七に救われて佐七の住居に落ちつく。小糸の養母おてつは小糸を伴平にとりもつため,佐七の頭勘右衛門に噓八百を並べ,義理にかられた佐七から小糸をとりもどす。佐七の父は以前加賀侯の供先に突き飛ばされたのがもとで死に至ったため,佐七が加賀家を恨みに思っているのを幸い,伴平とおてつは小糸の実父が加賀家の供先の武士であると小糸に吹きこむ。敵同士であると信じた小糸は佐七に愛想づかしをする。佐七は小糸の変心に怒り,柳原土手で待ち伏せし,出刃包丁で斬殺する。死ぬきわに小糸が手渡した書置で小糸の真意が知れ,佐七は伴平を斬って恨みをはらす。《本町糸屋娘》(1754),《糸桜本町育》(1777)など,小糸佐七物系譜に属するが,直接には4世鶴屋南北作《心謎解色糸こころのなぞとけたいろいと)》(1810)の影響が色濃い。いなせな鳶の者と芸者という幕末風俗の中に江戸前気風を横溢させたところに特色があり,愛想づかしの縁切から殺しへと移行するパターン二番目狂言らしい色どりになっている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「江戸育御祭佐七」の意味・わかりやすい解説

江戸育御祭佐七
えどそだちおまつりさしち

歌舞伎(かぶき)脚本。世話物。3幕。3世河竹新七作。通称「お祭佐七」。1898年(明治31)5月東京・歌舞伎座で5世尾上(おのえ)菊五郎の佐七、6世尾上梅幸(当時栄三郎)の小糸により初演。恋仲の鳶(とび)の者お祭佐七と暮らしていた柳橋芸者小糸が、恋敵の侍に頼まれた義母にだまされて、心にもなく男へ愛想(あいそ)づかしをするので、怒った佐七が柳原土手で小糸を殺すという筋。4世鶴屋南北作『心謎解色糸(こころのなぞとけたいろいと)』を書き換えたもので、歌舞伎、浄瑠璃(じょうるり)の一系統である小糸佐七の情話を扱った作の一つだが、そのなかで現代ではもっとも上演回数が多い。世話物の一類型である縁切りから殺しへ発展する構成だが、鳶の者と柳橋芸者の江戸っ子らしい歯切れのよさが特色である。

[松井俊諭]

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世界大百科事典(旧版)内の江戸育御祭佐七の言及

【河竹新七】より

…脚色物に機知と趣向の才を生かし,洒脱と速筆でも知られた。代表作に《籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)》(1888年千歳座)はじめ《塩原多助一代記》《怪異談(かいだん)牡丹灯籠》《江戸育御祭佐七》など。【河竹 登志夫】。…

※「江戸育御祭佐七」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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