六訂版 家庭医学大全科 「治療薬の種類」の解説
治療薬の種類
ちりょうやくのしゅるい
Types of therapeutic agent
(アレルギー疾患)
副腎皮質ステロイドホルモン
通常、単にステロイドと呼ばれます。吸入や点鼻、軟膏などの局所薬と、経口薬や注射などの全身薬とがあります。通常は局所薬を中心に用い、全身薬は喘息
吸入ステロイドは、慢性喘息の第一選択治療薬です。用量・用法を守って用いれば安全であり、喘息のコントロールには欠かすことのできない、非常に重要な治療薬です。
通常、朝晩の1日2回、発作の有無に関係なく定期的に吸入することが大切です。吸入のあとで必ずうがいをします。全身の副作用はなくても、咽喉頭の刺激症状が出ることがあるためです。
点鼻ステロイドはアレルギー性鼻炎の鼻閉症状などに高い効果を発揮します。
軟膏・クリームなどの皮膚科用薬はアトピー性皮膚炎の湿疹に大変よく効きますが、顔などに強力な軟膏を長く塗ると副作用が出ることがあり、一方で、その病変部に力の及ばない弱い軟膏を長く塗っていても意味がありません。使用に際しては専門医の指示に従う必要があります。
全身ステロイドについては、喘息の増悪時には一定期間、十分な量を用いることが大切です。長期投与されるのはアレルギー疾患では重症喘息の場合ですが、長期間用いると、胃潰瘍、糖尿病、
免疫抑制薬
アトピー性皮膚炎の顔などの病変に対して、
抗アレルギー薬
アレルギー反応が起こると、局所にヒスタミンやロイコトリエンなどの化学伝達物質が遊離され、喘息、鼻炎、皮膚炎などの症状をもたらします。これらの遊離を抑える薬と、作用を阻害する薬などを総称して抗アレルギー薬といいますが、国際的には作用阻害薬が主流になっています。
抗ヒスタミン薬は主に鼻炎の鼻水やくしゃみ、皮膚のかゆみ、じんま疹などに用いられます。副作用に眠気があります。最近は1日1回型の製剤や、眠気が出にくい薬も多数出てきました。なおセレスタミンという薬は、抗ヒスタミン薬とステロイドとの合剤なので、使用は短期間にとどめたほうが安全です。
抗ロイコトリエン薬は慢性喘息の維持管理薬として有用で、鼻炎の
そのほかに、抗トロンボキサン薬は喘息や鼻炎の鼻閉症状に用いられることがあります。炎症を調節するサイトカインがつくられるのを抑制するとされるアイピーディーという薬もあります。
気管支拡張薬
喘息で用いられます。5歳以上の慢性喘息では、基本的に吸入ステロイド療法がすすめられますが、何らかの喘息症状が平均して週に1回以下、間欠的にのみみられるようなケースでは、気管支拡張薬の
気管支拡張薬には交感神経β2受容体刺激薬(β2刺激薬)、テオフィリン薬、抗コリン薬があります。このうち喘息でよく用いられるのは、β2刺激薬とテオフィリン薬です。長期使用する場合には、吸入ステロイドを十分に用いたうえで、その補助として用いられるべきです。
●β2刺激薬
β2刺激薬は、交感神経で気管支を拡張する方向にはたらくβ2受容体を刺激する薬です。
吸入薬として、発作止めとして用いられる短時間作用型の
また最近は、長時間作用型β2刺激薬も吸入ステロイドの配合剤(シムビコート、アドエア)が使用できるようになっています。発作止めの噴霧器はあくまでも緊急避難的に用いられるべきで、しばしば用いるような場合は医師によく相談する必要があります。
β2刺激薬は、効果が高いのですが、あくまでも吸入ステロイドの補助薬であって、これ自体には喘息の基礎病態である気道の炎症を抑える作用はありません。吸入ステロイドを十分な量で、規則正しく用いてもコントロールが得られない喘息においてだけ、補助的に使用されるべきです。小児では重症で持続性の喘息以外には用いるべきでありません。
経口薬としては短時間作用型のものから長時間作用型のものまで多数あり、後者は喘息の維持管理薬として用いられてきましたが、最近は吸入薬や貼付製剤が主流になってきています。
β2刺激薬の副作用には
●テオフィリン薬
テオフィリン薬には、主に維持管理用に用いられるテオドールやユニフィルなどの経口薬と、発作時に用いられる注射薬であるネオフィリン、テオドリップがあります。
テオフィリンは気管支拡張作用と、喘息の基礎病態である気道の炎症を軽減する作用とを併せもっています。そこで軽症例では、この製剤を単独で用いることも容認されています。この点が吸入β2受容体刺激薬とは違っています。
しかし、テオフィリン薬が本領を発揮するのは、中等症以上の喘息で吸入ステロイドの補助薬として用いられた場合であり、すぐれた併用効果を表します。
副作用として胸やけ、吐き気などの胃症状、心刺激性、不眠などの中枢刺激症状、多尿などがあります。血中濃度が上昇しすぎるとこのような副作用が現れるので、血中濃度をモニターしながら使用することがすすめられ、また、最近は低用量で用いられる傾向にあります。
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報