アレルギー性鼻炎(読み)あれるぎーせいびえん(英語表記)allergic rhinitis

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アレルギー性鼻炎」の意味・わかりやすい解説

アレルギー性鼻炎
あれるぎーせいびえん
allergic rhinitis

アレルギーによっておこる鼻の炎症症状は、くしゃみ鼻水鼻漏)、鼻づまり(鼻閉)の三つである。アレルギー性鼻炎は「鼻アレルギー」ともいわれ、ほぼ同義であるが、鼻アレルギーは鼻腔(びくう)だけでなく、副鼻腔のアレルギーも含む表現であるので、やや広い概念である。

[高増哲也 2021年9月17日]

分類と原因

アレルギー性鼻炎は、通年性(季節に関係なく症状がおこる)と季節性(特定の季節に症状がおこる)に分けられる。同じ人にその両方がみられる場合もある。通年性アレルギーの抗原アレルゲン)でもっとも多いのは、ダニである。季節性アレルギーの抗原でもっとも多いのは、花粉である。したがって季節性アレルギー性鼻炎は「花粉症」ともよばれるが、花粉症には眼(め)に症状が現れるアレルギー性結膜炎も含まれる。

 体の外にあるダニや花粉の抗原が鼻腔粘膜に付着すると、体の内側のマスト細胞にある抗体(IgE抗体)と反応し、マスト細胞からヒスタミンロイコトリエンが遊離することで、ヒスタミンはくしゃみと水様性の鼻水、ロイコトリエンは鼻づまりを引き起こす。

[高増哲也 2021年9月17日]

診断と治療

診断は症状の出方などについての問診、鼻鏡を用いた鼻腔粘膜の観察、鼻水中の好酸球の観察、血液や皮膚などを用いて抗体を検査することなどによって行う。

 治療には、抗原となっている物質の回避、薬物療法、免疫療法、手術がある。抗原となっている物質の回避は、ダニの場合は部屋や寝具を清潔に保つ(掃除機をかけるなど)、花粉の場合は花粉が鼻腔に入ってこないようにマスクをすることなどがある。薬物療法は、内服薬、点鼻薬が中心となるが、その他生物学的製剤の注射、漢方薬の投与などがある。内服薬としては、くしゃみ、鼻水には抗ヒスタミン薬、鼻づまりには抗ロイコトリエン薬を用いる。点鼻薬は鼻噴霧用ステロイド薬がおもに用いられ、くしゃみ、鼻水、鼻づまりに効果がある。その他、点鼻用血管収縮薬は鼻づまりに即効性があるが、長期的には鼻づまりを悪化させるため、やむをえず使う場合は一時的な使用にとどめる。免疫療法は、抗原エキスを舌下または皮下に繰り返し投与して抗原に慣れさせる方法であり、原因に対する根本的な治療法となりえる。手術は粘膜を切除する方法で、レーザーを用いる方法もあるが、再発することもある。

[高増哲也 2021年9月17日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アレルギー性鼻炎」の意味・わかりやすい解説

アレルギー性鼻炎
アレルギーせいびえん
nasal allergy

くしゃみ発作,水様の鼻汁,鼻づまり(鼻閉塞)をおもな症状とする鼻疾患のうち,臨床的に抗原の明らかなもの。抗原の不明なものは血管運動性鼻炎として区別する。両者を総称して鼻過敏症と呼ぶこともある。抗原は主として吸入性で,室内塵,ダニ,花粉,真菌などが関係することが多い。いわゆる花粉症の症状をとることが多い。しばしば気管支喘息も併発する。(→鼻炎

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