日本大百科全書(ニッポニカ) 「波野」の意味・わかりやすい解説
波野
なみの
熊本県北東部、阿蘇(あそ)郡東部にあった旧村名(波野村(そん))。現在は阿蘇市の東部を占める。2005年(平成17)阿蘇町、一の宮町と合併、市制施行して阿蘇市となった。旧村域は阿蘇外輪山の東部斜面に位置し、標高700~850メートルの波状の緩傾斜面からなる。産業はトウモロコシを中心にした雑穀栽培と赤牛飼育ならびに養蚕を兼ねた農業であったが、県奥に位置するわりには、豊後(ぶんご)街道を継承した国道57号や現JR豊肥(ほうひ)本線など幹線路が域内を横断していること、さらに地域特性である高冷地性を巧みに生かした輸送園芸農業(主としてキャベツ、ハクサイ、ダイコンなど)の導入に積極的であったことなどが幸いし、1964年(昭和39)には県の、1966年には国の特産野菜産地に指定されるまでに変貌(へんぼう)した。近年、価格変動の激しい野菜栽培の欠陥をすこしでも解消するため、観光農園化に結び付きやすいゼンマイ、ワラビ、クリ、リンゴの栽培を始めたほか、従来行われてきた採種用ジャガイモ、赤牛飼育もふたたび盛んになり始めた。恵まれた眺望のほか、自生スズランの開花、荻(おぎ)神社の春秋の例祭で奉納される岩戸神楽(いわとかぐら)(選択無形民俗文化財)も相当数の観光客を招いている。
[山口守人]