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九州の中央、熊本、大分両県にまたがる国立公園。面積726.78平方キロメートル。火山地形、地質、温泉が特徴。国立公園法(現、自然公園法)に基づき、1934年(昭和9)3月に初指定された瀬戸内海、雲仙(うんぜん)(1956年雲仙天草に名称変更)、霧島(1964年霧島屋久(やく)、さらに2012年霧島錦江湾(きんこうわん)に名称変更)に続き、同年12月に阿寒(あかん)(2017年阿寒摩周(ましゅう)に名称変更)、大雪(だいせつ)山、日光、中部山岳とともに阿蘇国立公園として二次指定された。1986年9月、阿蘇くじゅう国立公園と名称変更。指定当初は、阿蘇複式火山地区と九重(くじゅう)火山群地区のみであったが、1953年(昭和28)日本初の道路公園の造成を前提に、九重火山群地区の北の飯田(はんだ)高原から崩平山(くえんひらやま)を経て、別府市街地背後の由布(ゆふ)・鶴見(つるみ)火山群までが追加指定された。その際、高崎山地区も加わった(1956年瀬戸内海国立公園へ移管)。また、1965年には大分自動車道沿線地域の追加および削除も行われた。公園道路「やまなみハイウェイ」は1964年に完成し、細長い阿蘇くじゅう国立公園に一体感を与えただけでなく、泉都別府から阿蘇くじゅう国立公園、熊本、島原、雲仙を経て長崎に至る九州横断国際観光ルートを形づくった。
中心は、年間500万人を超す観光客のある阿蘇複式火山地区で、阿蘇カルデラの景観は訪れる人の目を奪う。平安時代にはすでに噴火口を神霊池と見立てた火山神崇拝が行われており、中岳噴火口から西方の緩斜面には、西巌殿寺(さいがんでんじ)の36坊52庵(あん)が立ち並び、坊中(のちに古坊中)と称していたほどである(1586年の戦火で壊滅)。神霊池の参拝(岳参り)から、阿蘇山が広く一般登山者の対象になるのは、大正中期以降のことで、優れた自然の景勝地として知れわたるようになった。独特の生業が因となって生じた人工景観(野焼きの習慣によって維持された放牧地)、そのなかにあって自生地を守っているミヤマキリシマ、ナナカマド、イワカガミ、リンドウなどの植物景観も見逃すことができない。植林によるもの以外ほとんど高木林の認められない阿蘇複式火山地区に比べ、その北東部に隣接する九重火山群地区の諸火山、さらに別府湾を望む位置にある由布・鶴見火山群は、いずれもブナ、ミズナラ、クマシデなどの高木林、ナナカマド、ツクシシャクナゲ、コミネカエデ、ベニドウダンなどの低木林を有し、植物景観の季節変化だけでなく、垂直変化も堪能(たんのう)することができる。白山火山帯(はくさんかざんたい)と霧島火山帯とがぶつかる所だけに、数多くの温泉があり、観光施設は十分に整っているほか、公園内の涌蓋(わいた)山周辺山麓(さんろく)では地熱利用開発が盛んで、南東麓の大(おお)岳、八丁原(はっちょうばる)で地熱発電所が稼動している。交通は大分自動車道、JR豊肥(ほうひ)本線、久大(きゅうだい)本線が利用される。
[山口守人]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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