イギリスの化学者であり物理学者でもあるファラデーが残した足跡は大きい。とくに電磁気学への貢献は大きく、彼が発見した基本法則にファラデーの名が冠せられている。
[山口重雄]
電気分解で電極に析出する元素または原子団の量は、電流と時間の積(電気量)に比例すること、および元素または原子団の1グラム当量を析出するのに必要な電気量は、原子、原子団の種類によらず一定であるという法則(1833年発見)。ファラデーの電気分解の法則ともいう。この結果、電気量に客観的な基準が与えられるようになった。一価のイオンを1モル電気分解するのに必要な電気量はファラデー定数とよばれている。
[山口重雄]
コイルを通る磁束数が変化するとコイルに誘導起電力が発生するという法則(1831年発見)。ファラデーの誘導法則ともいう。電流から磁気が発生する以上、磁気から電流が発生するはずであるというのがファラデーの着想であった。定常的な電流から定常的な磁界(磁場)が生ずるので、定常的な磁界を用いて実験の失敗を重ね、磁束の変化が電流の発生に結び付くことをみいだすのに7年間を要した。
[山口重雄]
電気分解の際に電極系に流れた電気量(電流×時間)と,電気分解によって生じた化学変化の量との間の定量的な関係を表す法則で,M.ファラデーが提出した(1833)。それによると,(1)同一の物質については,電気分解によって析出する物質の質量は流れた電気量に比例し,(2)同じ電気量で析出する種々の物質の質量は,それぞれの物質の化学当量に比例する。したがって,すべての物質の1グラム当量を電気分解で析出させるのに必要な電気量は相等しい。この電気量はファラデー定数と呼ばれ,記号Fで表す。1F=9.648456×104C/mol。1Fは,電気素量(電子の電荷)とアボガドロ数との積に等しい。1Cの電気量で析出する物質の量は,銀1.118mg,水素ガス0.010446mg。
執筆者:玉虫 伶太
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M. Faraday(ファラデー)により1834年に発表された通過電気量と電極で反応する物質の量との関係についての法則で,次の二つよりなる.
(1)電流の通過により生じる分解生成物の量は,電解質を通過した電気量に比例する.
(2)同一の電気量によって分解する物質の量は,その電気化学当量に比例する.
この法則は電子伝導性のない純イオン伝導体であれば,電流密度,温度,濃度,および溶媒の性質に無関係に成立する.1モル当量の物質を電解するのに要する電気量は物質に無関係に一定で,96485.34 C(クーロン)である.この量を1ファラデーとよぶ.また,1 C の電気量で電解される量は電気化学当量とよばれる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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