浮稲(読み)うきいね

世界大百科事典 第2版 「浮稲」の意味・わかりやすい解説

うきいね【浮稲 floating rice】

水深が著しく深くなるような水田に適応したイネ品種群をいう。土壌に固着して生育するが,茎葉の先端部が,深く湛水(たんすい)された水面上に漂うような様相を呈するため,このような名称で呼ばれている。ふつうのイネに比べて,伸長節間数が多く,草丈は数mに達することもあり,多数の根が水中に伸長する。乾季雨季の区別が明りょうな,インドからベトナムにかけての大河川流域低地で栽培される。この地域では,雨季の進行に伴って,増水した河川がはんらんし,流域の水田の水位はしだいに上昇し,4~5mの水深に達することもまれでない。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「浮稲」の意味・わかりやすい解説

浮稲
うきいね

イネの特殊な品種群の一つ。普通のイネは、開花期近くになってから、茎の上部の数節間が伸長するが、浮稲は深水中で生育する場合、生育の初期から稈(かん)が伸び、3~5メートルから長いものは十数メートルにも達する。おもに東南アジアのデルタ地帯に産し、環境適応の一つとみられる。減水期に直播(じかま)きされたイネは、増水期に水位が上昇するのにしたがって、新しい葉の出る部分がつねに水面上に出るように節間が伸長し、節の数も増加する。こうして水没を免れ、種子を残すことができる。インド型のイネにみられ、多くの生態型に分けられる。日本のイネには浮稲型のものはない。

[星川清親]


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精選版 日本国語大辞典 「浮稲」の意味・読み・例文・類語

うき‐いね【浮稲】

〘名〙 水稲一種。東南アジア諸国やバングラデシュ大河氾濫をうける低湿地で栽培される。氾濫による水位の上昇にともない急速に生長し、三~四メートルの高さまで伸び、穂先だけが水面上に出る。

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デジタル大辞泉 「浮稲」の意味・読み・例文・類語

うき‐いね【浮(き)稲】

イネの品種で、水位が上昇したとき、急速に生長して葉や穂先を水面に出すことのできるもの。草丈は数メートルから十数メートルになることもある。東南アジアなど洪水の多い低湿地で栽培される。

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世界大百科事典内の浮稲の言及

【東南アジア】より

…ただ品種だけは深水に耐えうるような特別なものが用いられる。いわゆる浮稲である。 雨季の大湛水はデルタを魚で満たす。…

※「浮稲」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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