海綿動物のうち,河川や湖沼に生息するタンスイカイメン科Spongillidaeに属する種類の総称。つねに水がゆるやかに流れている場所に生息し,湖沼では水が流入,または流出する付近に見られる。水草,石や諸施設などに付着していて,同一種が世界各地に広く分布する傾向がある。世界で約150種,日本で25種が知られている。
形は塊状,盤状,樹枝状などであるが,水温の変化や水の流動によって外形が変化し,骨片や骨格の強度にも影響が生ずる。ふつう緑色や帯黄色であるが,これは藻類が共生しているためで,深いところのものは白色や灰色である。骨片は両端がとがった桿状(かんじよう)で,これらが粗雑に組み合わされていて,全体は軟らかく壊れやすい。
寒冷または乾燥して生息場所の環境が悪くなると,間充組織の中の始原細胞が球状の小さい集団をつくり,その外側をキチン質の外皮で包むか,多くの芽球骨片が並んで芽球をつくる。芽球は球円形で,その一部に芽球口孔が開いている。寒気や乾燥に抵抗力が強く,母体が死んでも芽球はそのまま残って,適当な環境条件になると芽球口孔から内部の芽球細胞が出て新しい個体になる。この芽球が集まったものを〈フナの子〉とも呼ぶ。
ミュラーカイメンEphydatia muelleri,カワカイメンE.fluviatilis,ヌマカイメンSpongilla lacustrisなどがあり,1983年には横利根川より新属新種のSanidastra yokotonensisという種類が発見された。
カワカイメンは殻層状,または団塊状であるが,表面に大小の不規則な突起をだすものがある。骨片では遊離小骨片をもっておらず,芽球の表面の芽球骨片は両盤体で求心的に配列している。ヌマカイメンは殻層状であるが樹枝状か指状の突起をだすものが多い。遊離小骨片は桿状体で表面に小さい棘(きよく)が密生している。芽球骨片は湾曲した桿状体。有用種はない。
執筆者:今島 実
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
海綿動物門のうち、淡水の河川や湖沼にすむ海綿の総称。分類学的には、淡水海綿はすべて尋常海綿綱の単骨海綿目に属している。石灰海綿綱、六放海綿綱には淡水にすむ種類はいない。世界中で150種類程度の淡水海綿が知られているが、日本からは約30種が知られている。形は団塊状、殻層状など一定していない。水中の枯れ枝、水草、杭(くい)、貝などに付着している。色は鮮緑色から灰白色まである。日の当たる場所に成育するものは緑藻の共生を受けて緑色になっていることが多い。質は柔らかくて壊れやすい。骨格骨片は海産のムラサキカイメンと同じ桿状体(かんじょうたい)であるが、ときに骨片の表面が微細な棘(とげ)で覆われることもある。ミューラーカイメン、カワカイメン、カワムラカイメンなどがある。
淡水海綿の特徴として、芽球形成という現象があげられる。これは、水温の低下、乾燥など成育環境が悪くなると海綿の体内に芽球とよばれる無性生殖芽がつくられることである。芽球は普通1ミリメートル以下の球状体で、外皮は芽球骨片とよばれる特別な骨片でつくられ、内部には始原細胞が詰まっている。芽球は寒冷や乾燥に耐え、環境がよくなると芽球口孔とよばれる口から、始原細胞の塊が水中に出て新しい海綿に発達する。芽球の形、芽球骨片、芽球口孔の形状は、淡水海綿の種類によって異なるので、分類の有用な特徴となっている。
[星野孝治]
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