添え状(読み)そえじょう

精選版 日本国語大辞典 「添え状」の意味・読み・例文・類語

そえ‐じょうそへジャウ【添状・副状】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 人または物に添えて送る簡潔な書状。特に中世侍臣が内容をより詳しく反復するために添えた状をさしていうことがある。そえしょ。そえし。そえふだ。そえぶみ。そいじょう。そえてがみ。
    1. [初出の実例]「上より殺し参らすまじき副状下りて」(出典:日蓮遺文‐種種御振舞御書(1275))
    2. 「揚屋利右衛門に尋、京よりの添状(ソヘジャウ)つかはし、十蔵を、冝敷大臣と申」(出典:浮世草子・好色一代男(1682)八)
  3. 中世、訴訟手続きのさい、添付された文書
    1. [初出の実例]「宝滕院法印訴訟事、重増僧都強文、同副状、随而法印副状両三通披露之処」(出典:東寺百合文書‐ち・享徳四年(1455)正月二九日・二十一口方評定引付)
  4. 近世為替手形(かわせてがた)別称
    1. [初出の実例]「そへ状は届いたが銀はなぜ届きませぬ」(出典:浄瑠璃・冥途の飛脚(1711頃)上)

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改訂新版 世界大百科事典 「添え状」の意味・わかりやすい解説

副状/添状 (そえじょう)

中世において本文書に副(そ)えた書状。安堵状,裁許状,寄進状,補任状,沽却状,譲状,訴状などの公験(くげん)を当事者に送付するときに,本文書の補足・解釈・経過などとともに送付の旨を書いて副えるもの。11~12世紀,太政官における消息宣下(口宣に副えた上卿書状),国司庁宣に副え当事者に与えた院宣などに使用されたのが早い例で,公式様文書の符や解(げ)による奉行・進達が職権的に機能しなくなる時期に生み出されたものである。これはまた日本における書状様式の確立と書状の公文書化の時期に一致している。

 なお,年貢,贈物,道具など物品の送進のとき添える書状は,送進状といい,副状とは区別されている。また国司庁宣を留守所が施行したり,室町殿将軍)の御判御教書を管領や守護が施行・遵行するように,職制上の上意の文書を担当下部機関に周知・実行させるために,下達の過程で順次書き添える文書は,施行(しぎよう)状,遵行(じゆんぎよう)状といい,副状とは異なるものである。
執筆者: また,人の紹介,物の贈答などの際の送進状は添状添文添簡とも称して中世・近世には一般的に使用されたが,訴訟文書や証文証拠書類として添付される文書も添状といった。近世の土地証文には,本証文の記載内容の変更などを証明するために添証文が付されていることがあるが,これも添状の一種といえよう。
執筆者:

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世界大百科事典(旧版)内の添え状の言及

【口上書】より

…口状,口上控,口上手控等ともいう。文書で意志を伝達する方法に対し,口頭=言葉で用件を申し述べるところを,その代りに書きものにしたもの。,覚書とまぎらわしいが,本来,口上は本人がわざわざ相手方に参上し,面談あるいは申し述べるべきものを,相手方の取次者あるいは自分の使者に託した略礼の心があるようである。また別の本状に添えた説明の意のある添状の一種であるものもある。書式は一定しないが,宛所,差出,日付を欠くもの,その一部を具備したもの,一つ書,事書のもの等がある。…

【老中】より

…江戸幕府の職制。年寄,宿老,閣老,執政とも呼ばれ,全国を統治する徳川氏将軍家の〈老〉(としより,おとな)として,将軍に直属してその信任のもとに,所司代,三奉行,遠国奉行,大目付などを指揮して国政を統轄した(老中の〈中〉は〈連中〉〈若者中〉などというように集合を表し,また〈――衆〉のように敬意を表す機能をもつ)。また加判の列とも呼ばれたが,これは老中連署奉書(老中奉書)に署名し,判(花押)を加える者という意味である。…

※「添え状」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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