湯前(読み)ゆのまえ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「湯前」の意味・わかりやすい解説

湯前(町)
ゆのまえ

熊本県南東部、球磨郡(くまぐん)にある町。1937年(昭和12)町制施行。くま川鉄道、国道219号、388号が通じる。北西半域は人吉(ひとよし)盆地に、南東半域は九州山地南部に属するが、町域の80%弱が山林で、その一部は奥球磨県立自然公園に指定されている。西隅の人吉盆地東端をなす台地ならびに低地には本町のあらゆる機能が集中している。とくにJR人吉駅から分岐するくま川鉄道湯前駅付近は、上球磨地方の機能の中心としての性格を有していた。産業的には久しく米麦に依存した農業とスギヒノキ製材を中心とした林業であったが、昭和40年代後半からメロン、葉タバコ、ブドウの栽培が、また和牛、乳牛の飼育などが積極的に導入されてきている。明導寺に伝わる旧浄心寺(城泉寺)の木造阿弥陀如来(あみだにょらい)および両脇侍(きょうじ)像、阿弥陀堂、九重石塔、七重石塔はいずれも国指定重要文化財。里宮神社で舞われる球磨神楽(くまかぐら)は国指定重要無形民俗文化財である。湯前駅前に町立のまんが美術館がある。面積48.37平方キロメートル、人口3627(2020)。

[山口守人]

『『湯前町誌』(1966・湯前町)』


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改訂新版 世界大百科事典 「湯前」の意味・わかりやすい解説

湯前[町] (ゆのまえ)

熊本県南東部,球磨(くま)郡の町。人口4375(2010)。東は宮崎県に接し,北西境沿いを球磨川が南西流する。西部は人吉盆地の最東端にあたる平地で,1705年(宝永2)人吉藩士高橋政重が開削した幸野溝(こうのみぞ)によって灌漑される。中心集落の湯前は谷口集落で,林産物集散地として発達した。1924年人吉からの国鉄湯前線(現,くま川鉄道)が開通してその終点となり,35年には宮崎へ抜ける国道219号線が通じた。米のほか畜産,タバコ,メロン,果樹などの栽培が行われ,良質の杉,ヒノキを産する。製材工場球磨焼酎の酒造場がある。湯前駅近くにある貞応年間(1222-24)創建の明導寺の阿弥陀堂は県下最古の木造建造物で,堂内の阿弥陀三尊,境内の七重石塔,九重石塔は重要文化財に指定されている。
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百科事典マイペディア 「湯前」の意味・わかりやすい解説

湯前[町]【ゆのまえ】

熊本県南東部,球磨(くま)郡の町。球磨川上流,人吉盆地北東端を占める。主集落は林産物の集散地として発達,1924年の湯前線(1989年くま川鉄道に転換)開通後は商業町として発展。製材,焼酎(しょうちゅう)などの小工場も多い。湯前駅の北東に湯山温泉がある。48.37km2。4375人(2010)。

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