河川が山地から平地に出る谷口に立地する集落。渓口(けいこう)集落ともいう。生産活動の異なる山地と平地との接触地点にあたり,両地域の生産物,日用必需品の交易をおもな機能として発達した集落が多い。また,地形的には傾斜変換点にあるので,水車を動力とする機業や製粉業が発達した集落もあり,いずれも山麓地方の経済上の中心地をなす。ほとんどは谷口に沿う河岸段丘上に街村をなして立地し,宅地割は道路に直交する短冊形で,家屋は比較的高密度に凝集し,広い道幅にかつて市庭(いちば)(市場)があったなごりをとどめている例が多い。
山地に富む日本では各地の山麓部,山間盆地周縁にその例が見られる。とくに関東地方西部から北西部の山麓地帯は代表的な分布地域であり,八王子,五日市,青梅,飯能,越生,小川,寄居,鬼石,下仁田,渋川,中之条,原町,沼田,大間々,桐生などの谷口集落が発達している。また,新潟平野南東縁,富山平野南縁にも多く分布する。奈良盆地の桜井,京都盆地の宇治,和歌山の新宮,大阪の池田,鳥取の倉吉などもその例である。日用品のほかに特産物なども交易して発達した場合も多く,その後背地の広狭,交通路の条件を反映した。明治以後には,交通機関の変化,店舗商業の発達などの経済的変化により,市場町としての機能を失ったり,他の機能を備えたりで,集落の盛衰が見られる。
執筆者:滝沢 由美子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
河川が山間部から平地部に流れ出す「谷口」に発達した、商工業者が多く集まる町場(まちば)色の強い集落をいう。渓口(けいこう)集落ともいう。山間部と平地部ではそれぞれ趣(おもむき)を異にした生産活動をするので、両者が接触する谷口では山方と里方の生産物を交換する機能を果たすようになる。そして谷口ではまずあらかじめ交換日(市日(いちび))と場所(市庭(いちば))が協定されて交換や取引が行われ、やがて市場集落が発達する。交換・取引される農林産物には加工適材が少なくなく、谷口は市場商業に加えて、山方・里方両地の生産物資の加工業地としても発達してきた。日本では中央部に山地が広く連なり、多くの河川がそこに発源して堆積(たいせき)平野をつくり、谷口部には大小規模の谷口集落が発達し、流通と加工業地の機能を果たしている。関東山地の東縁とその山麓(さんろく)平野との境界地帯には早くから谷口集落が発達し(五日市その他)、その好例地域とされるが、全国諸地域にもそうした類例が数多くみられる。
[浅香幸雄]
『中島義一著『市場集落』(1965・古今書院)』▽『矢嶋仁吉著『日本の集落』(1969・古今書院)』
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