中国で用いられた水時計のこと。漏は計時用の漏壺を指し,刻は時間の単位(1日は100刻が標準であるが,120刻,96刻,108刻とした時期があった)を意味する。時刻を目盛った浮箭(ふせん)を浮かべ,水位の変化によって時刻を測った。漏壺は排水型と受水型に大別される。《周礼(しゆらい)》に漏刻の官の挈壺氏が見え,春秋時代までに広く普及していたとされるが,遺物としては前漢の前100年ころの漏刻が3点発見されており,いずれも排水型の単壺である。流量を一定にするために複数の器を連ねた受水型の漏刻は前2世紀の張衡以後に用いられ,唐初の呂才は4個の升を連ねたものを設計し,北宋の燕粛は別に水位を一定に保つため復壺を中間に置いた蓮花漏を作った。受水型の遺物には元の1316年(延祐3)の延祐漏壺がある。日晷(につき)すなわち日時計の起源は圭表であり,《周礼》に土圭の官が見える。秦・漢時代の真太陽時を測る日晷は3点ばかり出土しているが地平日晷か赤道日晷かについては意見が分かれる。後に元の郭守敬は球面日晷を作った。
なお,日本では671年(天智10)〈漏刻を置く〉との記事が《日本書紀》にあり,その後,大宝令には漏刻博士があって,これを管理した。しかし平安時代末期になると漏刻もなくなり,漏刻博士も絶えた。
執筆者:橋本 敬造
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水時計の意。日本では斉明(さいめい)天皇6年(660)5月、中大兄皇子(なかのおおえのおうじ)(後の天智(てんじ)天皇)が初めて漏刻をつくって時を知らせ、天智天皇10年(671)4月25日(現行暦の6月10日にあたる)、漏刻を新天文台に据え、鐘や鼓(つづみ)で時を報じたと『日本書紀』に記されている。おそらく中国のものを手本にしたと考えられるが、2~4段の木箱を置き、いちばん上部の木箱に水を満たし、管によって順々に水を下段の箱に送り込む。最後の水槽に目盛り付きの浮き子があって、その浮き沈みで時刻を知ったと推定されている。天智天皇を祀(まつ)る近江(おうみ)神宮では毎年6月10日、時の記念日に漏刻祭が行われる。なお、1981年(昭和56)9月から12月にかけて奈良国立文化財研究所(現、奈良文化財研究所)が行った飛鳥水落(あすかみずおち)遺跡の発掘調査によって、この遺跡が660年、日本で初めてつくられた漏刻の遺跡である可能性がきわめて強くなっている。
[元持邦之]
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水時計のこと。水を利用して時を知る時計で,時を計るための漏壺(ろうこ)には排水型と受水型がある。技術上の難点からヨーロッパではおもに日時計が使われたのに対して,中国・日本では漏刻が盛んに用いられた。とくに中国では水力による時間計測技術が発達し,水力で動くプラネタリウムまで考案された。日本では660年(斉明6)に中大兄(なかのおおえ)皇子(天智天皇)がはじめて作ったとされ,令制では陰陽寮に漏刻博士がおかれた。奈良県明日香村の水落(みずおち)遺跡には,その遺構から漏刻が設けられていたと考えられる。その後近世に至るまで使用されたようだが,構造に不明な点が多い。
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…煬帝(ようだい)のもとで東都(唐の洛陽の前身)の建設を主導し,将作大匠から工部尚書となった。また長城の修築,高句麗征伐の浮橋の架設,輿服の制定,漏刻(水時計)の設計も担当した。大興の都市計画は東西対称の条里を配し,宮殿,皇城を中央最北に置く斬新な創案であった。…
…日の影を測った八尺の表とか晷儀(きぎ)(ノーモン)があったが,おもな用法は冬至,夏至の時刻を知って1年の長さを決定するために使用されたようである。時刻あるいは時間はすべて漏刻(ろうこく)(水時計)によって測られた。漢の時代から精密な暦法があったことが知られているので,使用にたえる漏刻も西暦紀元前後にはあったと考えてよい。…
…また若干の星座をみて季節の推移を知ることもできた。時間の測定には主として水を利用した〈漏刻〉が使用されたが,それがいつの時代に始まるかはわかっていない。古い時代には日食や月食がよく注意されたが,これらは当時の支配者にとって凶兆と考えられたからである。…
※「漏刻」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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