改訂新版 世界大百科事典 「演奏会場」の意味・わかりやすい解説
演奏会場 (えんそうかいじょう)
concert hall
一定の空間の中に,演奏を行う演奏家を配置するステージと聴衆席をもつ建築物。コンサート・ホールともいい,オペラを上演することを目的としたオペラハウスとは区別される。聴衆席全体にステージからの音響が届くよう建築上の配慮がなされている。野外の会場も存在するが,この場合もステージのみは屋根および壁をもち,音響効果が工夫されている。
ヨーロッパでは,古くは教会や貴族の館などを会場として演奏の場がもたれていたが,一般市民が金銭を支払って音楽を鑑賞する習慣ができた18世紀後半ごろから,演奏会を専門に行う会場がぼつぼつ出現してきた。アメリカ大陸の場合もこれに準ずる。日本の場合は,伝統音楽の演奏はごく近年に至るまで料亭の大広間,個人の邸宅,寄席などで行われてきている。欧米ではその後,音楽自体の変化とともに,しだいに各地に大規模な演奏会場が作られるようになり,19世紀後半から末にかけて,ウィーンのムジークフェライン・ザール(1870),アムステルダムのコンセルトヘボウ(1888),ボストンのシンフォニー・ホール(1900)など,現在に残る名ホールが誕生した。第2次世界大戦後は,音楽人口の増大,楽曲の複雑化からくる要求,音響技術の進歩などの諸条件を総合して大型の演奏会場が建造されている。一方,小編成の演奏会のための会場も多く建設されるようになった。日本の場合は,歌劇場も兼ねる多目的ホールが多いが,しだいに目的をはっきり分けた会場作りに目が向けられるようになっている。
執筆者:成沢 玲子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報