改訂新版 世界大百科事典 「濃度計」の意味・わかりやすい解説
濃度計 (のうどけい)
物質中の特定な成分の濃度を計る装置の総称。おもに液体または気体を対象としたものが多い。狭義には計量法で定めた浮ひょう(秤)型濃度計,電気化学分析式濃度計,磁気式濃度計および光分析式濃度計などを指す。
浮ひょう型濃度計
液体の比重が含まれる成分の濃度によって変わることを利用したもので,アルコール水溶液中のエチルアルコールの濃度を体積百分率(vol%)で表す酒精度浮ひょう,ショ糖水溶液中のショ糖濃度を質量百分率(wt%)で表すショ糖度浮ひょうなどがある。浮ひょう型濃度計は構造が簡単で,液体に浮かべて濃度値を直接読み取ることができるので簡便であるが,特定な温度(標準温度)で正しい値を表すように目盛がつけられているので,その温度で使用することが必要とされる。
電気化学分析式濃度計その他
大気汚染,水質汚濁などの環境測定に用いられる測定器のうち,代表的なものが計量法で定められている。測定対象物質ごとに,あるいは濃度によってそれぞれ原理,構造が異なるものがあって,その種類は多い。基本的には,物質のもつ電気化学的性質を利用するもの,常磁性などの磁気的性質を利用するもの,光の吸収や発光など光学的性質を利用するもの,放射線の減衰,放出を利用するものおよび複数成分を分離し,各成分を定量するガスクロマトグラフの5種類に分けられる。表に原理別濃度計を示す。
これらの濃度計の中には,化学発光式濃度計のように特定の汚染物質(窒素酸化物など)を測定するためとくに開発されたものがあるが,多くは非分散型赤外線式濃度計(図1),導電率式濃度計(図2)など,通常,分析計(アナライザーanalyzer)と呼ばれ,生産現場において工程管理に用いられている計器と同種のものである。これらの濃度計は単一成分または2成分を対象としたものが多く,試料採取部,分析部と指示部とから構成される。また,計器への試料の導入,測定および記録などが自動化され,長時間の連続測定を行うことができる。
おもな特徴として,次の五つがあげられる。(1)原理的に特定成分に対してすぐれた選択性をもっているものが多く,混合物質の中の測定対象を選択的に検出することができる。一方,導電率式濃度計のように選択性がないものは妨害成分が影響しないような場合に使用される。(2)絶対測定方式でないために,あらかじめ組成,濃度が正確に与えられている物質(標準物質)によって計器の目盛を調整すること(目盛校正)が必要とされる。このことは,標準器と比較して目盛校正を行うことのできる浮ひょう型濃度計やはかり,水道メーターなどの他の計量器との重要な相違点である。(3)大気中の窒素酸化物測定の場合のようにごく低濃度の成分が測定の対象とされる例が多く,測定の精度を高めるために高感度の検出器の使用や,試料を濃縮して濃度を高くしたのち測定する方法がとり入れられている。また,一般に妨害成分の影響を少なくするための措置,たとえば非分散型赤外線式濃度計の干渉フィルターなどがとられている。(4)測定値は体積百分率,質量百分率,体積百万分率(vol ppm),グラム毎立方メートル(g/m3)およびピーエッチ(pH)の値のいずれかによって表示される。(5)濃度計の精度は,濃度計の種類や目盛範囲によって評価方法も異なる場合が多く,一定ではないが,たとえば計量法の検定を行っている非分散型赤外線式濃度計(一酸化炭素,二酸化硫黄および窒素酸化物計)では最高目盛の±5%の検定公差が与えられている。このことは,濃度計が0~100vol ppmの目盛の場合に±5vol ppmの精度が保証されていることを示す。
これらの濃度計は日本工業規格(JIS)によって,その構造,目盛の正確さならびに安定性などに関する許容誤差とそれらの試験方法が規定されているほか,いくつかの種類については計量法に基づく国家検定が行われており,さらに標準ガス,標準溶液などの標準物質の供給体系の整備をすすめることによってその性能が確保されている。
執筆者:内山 英樹
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報