濃紅銀鉱(読み)のうこうぎんこう(英語表記)pyrargyrite

日本大百科全書(ニッポニカ) 「濃紅銀鉱」の意味・わかりやすい解説

濃紅銀鉱
のうこうぎんこう
pyrargyrite

銀の硫塩鉱物中もっとも普通の種で、重要な鉱石鉱物の一つ。自形は六角柱状、鉱脈の空隙(くうげき)にみられるが、多く他の硫化物や脈石鉱物と密雑な集合をつくる。針銀鉱黄銅鉱とは直接共存しない。日本のおもな産地は、かつては秋田県雄勝(おがち)町(現、湯沢市)院内鉱山閉山)、兵庫県朝来(あさご)町(現、朝来市)大乗(だいじょう)鉱山(閉山)、神子畑(みこばた)鉱山(閉山)などで良晶を産したが、いまでは鹿児島県串木野(くしきの)鉱山などで小結晶がみられる程度である。火閃銀鉱(かせんぎんこう)pyrostilpniteとは同質異像関係にあり、その高温相に相当する。転移温度約200℃。英名はギリシア語の「輝く」と「銀」を意味する語の合成語である。

加藤 昭 2018年5月21日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「濃紅銀鉱」の意味・わかりやすい解説

濃紅銀鉱
のうこうぎんこう
pyrargyrite

三方晶系の鉱物。 Ag3SbS3硬度 2.5,比重 5.85。暗赤色金剛光沢,半透明。六角柱状結晶,劈開 が明瞭。条痕紫紅淡紅銀鉱とともにルビーシルバーと呼ばれる。輝銀鉱などと共生して各種熱水鉱床に産出する。銀の重要な鉱石鉱物。

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世界大百科事典(旧版)内の濃紅銀鉱の言及

【銀鉱物】より

…銀を数%以上含む鉱物は約60種知られている。重要な銀鉱物としては,自然銀native silver Ag,輝銀鉱argentite Ag2S,角銀鉱cerargyrite AgCl,ナウマン鉱naumannite Ag2Se,安銀鉱dyscrasite Ag3Sb,ジャルパ鉱jalpaite Ag3CuS2,硫ゲルマン銀鉱argyrodite Ag8GeS6,硫シャク(錫)銀鉱canfieldite(別名,カンフィールド鉱) Ag8SnS6,ゼイ(脆)銀鉱stephanite(別名,ゼイ安銀鉱) Ag5SbS4,濃紅銀鉱pyrargyrite Ag3SbS3,淡紅銀鉱proustite Ag3AsS3,雑銀鉱polybasite(別名,輝安銅銀鉱) (Ag,Cu)16Sb2S11,ヒ(砒)雑銀鉱arsenpolybasite (Ag,Cu)16As2S11,ヘッス鉱hessite(別名,ヘッサイト,テルル銀鉱)Ag2Teなどがある。このほか四面銅鉱や方鉛鉱には銀を含むものがあり,鉱床内に多産する場合にはシルバーキャリアとして重要視される。…

※「濃紅銀鉱」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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