日本大百科全書(ニッポニカ) 「濃紅銀鉱」の意味・わかりやすい解説
濃紅銀鉱
のうこうぎんこう
pyrargyrite
銀の硫塩鉱物中もっとも普通の種で、重要な鉱石鉱物の一つ。自形は六角柱状、鉱脈の空隙(くうげき)にみられるが、多く他の硫化物や脈石鉱物と密雑な集合をつくる。針銀鉱や黄銅鉱とは直接共存しない。日本のおもな産地は、かつては秋田県雄勝(おがち)町(現、湯沢市)院内鉱山(閉山)、兵庫県朝来(あさご)町(現、朝来市)大乗(だいじょう)鉱山(閉山)、神子畑(みこばた)鉱山(閉山)などで良晶を産したが、いまでは鹿児島県串木野(くしきの)鉱山などで小結晶がみられる程度である。火閃銀鉱(かせんぎんこう)pyrostilpniteとは同質異像関係にあり、その高温相に相当する。転移温度約200℃。英名はギリシア語の「輝く」と「銀」を意味する語の合成語である。
[加藤 昭 2018年5月21日]