輝銀鉱(読み)キギンコウ(英語表記)argentite

翻訳|argentite

デジタル大辞泉 「輝銀鉱」の意味・読み・例文・類語

きぎん‐こう〔‐クワウ〕【輝銀鉱】

硫黄からなる鉱物等軸晶系金属光沢のある黒灰色で軟らかく、ナイフで切れる。セ氏173度以下で単斜晶系に転移し針銀鉱になるが、両種を区別せず輝銀鉱とよぶことも多い。銀の重要な原料鉱石アルゲンタイト化学式Ag2S

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精選版 日本国語大辞典 「輝銀鉱」の意味・読み・例文・類語

きぎん‐こう‥クヮウ【輝銀鉱】

  1. 〘 名詞 〙 銀の硫化鉱物黒みのある鉛灰色で、不透明な金属光沢をもつ。等軸晶系で、網状樹枝状塊状をなす。熱水鉱床中に金銀鉱床を形成して産する。アージェンタイト。〔英和和英地学字彙(1914)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「輝銀鉱」の意味・わかりやすい解説

輝銀鉱 (きぎんこう)
argentite

化学組成はAg2S。Sを置換してSeが入ることがある。立方晶系に属し,立方体,八面体,まれに十二面体結晶をなす鉱物。明瞭な結晶形をなさず,樹枝状,塊状をなして産出することが多い。暗い鉛灰色で金属光沢をもつ。比重7.4,モース硬度2~2.5。展性に富み,また小刀で切れる。173℃以下では針銀鉱(Ag2S。単斜晶系)の方が安定であり,輝銀鉱として晶出したものも,室温では針銀鉱に転移している。銀の重要な鉱石。低温熱水性金銀鉱脈中,方鉛鉱,黄銅鉱,四面銅鉱,エレクトラムelectrum(20%以上の自然銀を含む自然金)などに伴われて産出する例として,新潟県佐渡鉱山,静岡県清越鉱山,鹿児島県串木野鉱山がある。また高温熱水性銀・コバルト鉱脈中にCo,Ni,Bi,As鉱物や,自然銀に伴われて産出する例として,カナダのオンタリオ州コバルト地方がある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「輝銀鉱」の意味・わかりやすい解説

輝銀鉱
きぎんこう
argentite

針銀鉱の高温変態後の仮晶pseudomorph(仮像ともいう。外形を保ったまま原子配列や化学組成が変化した結晶質物質)。転移点179℃。多く粒状、あるいは一見六方晶系の六角柱状の輪郭をもつ。

加藤 昭]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「輝銀鉱」の意味・わかりやすい解説

輝銀鉱
きぎんこう
argentite

Ag2S等軸晶系(→立方晶系)に属する銀の主要な鉱石鉱物。正六面体または正八面体微晶で塊状をなす。硬度 2~2.5,比重 7.2~7.4。金属光沢,帯黒鉛灰色。針銀鉱と同質異像。新第三紀の低温の浅熱水石英脈中に,ほかの銀鉱物,自然金,硫化鉱物などとともに産する。(→

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百科事典マイペディア 「輝銀鉱」の意味・わかりやすい解説

輝銀鉱【きぎんこう】

黒灰色で金属光沢の鉱物。主要な銀鉱石。組成はAg2S,八面体または六面体の結晶が多く,等軸晶系。硬度2〜2.5,切断性があり,比重7.2〜7.4。浅熱水鉱床の石英脈中に他の銀鉱,金とともに産し,産状は塊状,網状,樹枝状など。ときに方鉛鉱中に微粒として含まれる。

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世界大百科事典(旧版)内の輝銀鉱の言及

【銀鉱物】より

…銀を数%以上含む鉱物は約60種知られている。重要な銀鉱物としては,自然銀native silver Ag,輝銀鉱argentite Ag2S,角銀鉱cerargyrite AgCl,ナウマン鉱naumannite Ag2Se,安銀鉱dyscrasite Ag3Sb,ジャルパ鉱jalpaite Ag3CuS2,硫ゲルマン銀鉱argyrodite Ag8GeS6,硫シャク(錫)銀鉱canfieldite(別名,カンフィールド鉱) Ag8SnS6,ゼイ(脆)銀鉱stephanite(別名,ゼイ安銀鉱) Ag5SbS4,濃紅銀鉱pyrargyrite Ag3SbS3,淡紅銀鉱proustite Ag3AsS3,雑銀鉱polybasite(別名,輝安銅銀鉱) (Ag,Cu)16Sb2S11,ヒ(砒)雑銀鉱arsenpolybasite (Ag,Cu)16As2S11,ヘッス鉱hessite(別名,ヘッサイト,テルル銀鉱)Ag2Teなどがある。このほか四面銅鉱や方鉛鉱には銀を含むものがあり,鉱床内に多産する場合にはシルバーキャリアとして重要視される。…

【銀】より

…この現象は古くから経験的に知られており,飲料水の腐敗防止に銀製容器が,また負傷者の手当に銀箔が使用されていた。【水町 邦彦】
[製法]
 銀の鉱物は輝銀鉱Ag2S,角銀鉱AgClが主であるが,金との合金(エレクトラムelectrum)の自然銀としても産出する。しかし銀を採取できる銀鉱石はまれで,金の鉱石または銅,鉛,亜鉛の硫化物鉱石中に含有されるものから,これら金属の製錬の際に副産される。…

※「輝銀鉱」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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