日本大百科全書(ニッポニカ) 「炎光分析」の意味・わかりやすい解説
炎光分析
えんこうぶんせき
flame analysis
試料が炎中で生成する原子、分子、イオンなどのスペクトルを利用する分析法の総称。発光、吸光、蛍光の三つの分光分析法に大別される。狭義には発光を利用した炎光光度法(フレーム発光分光分析)のみをさす。おもに金属元素の定量に用いられる。
[高田健夫]
炎光光度法
金属塩を含む試料溶液を噴霧器とバーナーを用いて霧状にして炎中に送入すると、金属元素はおもに熱解離によって分子や原子状の気体になる。これらの分子や原子のほとんどは、もっとも安定な電子配列をもつ基底状態にあり、一部が励起状態になる。励起状態にある分子や原子は短時間に基底状態に戻り、このときそのエネルギー差に対応する波長の光を発する。フレーム発光分光分析は、このとき生ずるスペクトルの波長と強度から物質の定性と定量を行う方法である。
[高田健夫]
フレーム原子吸光分析
基底状態にある原子に、中空陰極ランプより発するその原子の単色光を当て、吸収の程度から定量を行う方法。
[高田健夫]
フレーム原子蛍光分析
中空陰極ランプや無電極放電ランプの単色光、またはキセノンアークのような発光強度の強い連続光を原子化した試料に照射し、これによって励起した元素が低エネルギー準位に戻るときに、同一あるいはそれよりも長波長の発光スペクトルを発する。この過程で発生した光を原子蛍光とよび、これを分析に利用する分析法である。
炎としては、空気‐プロパンガス(約1700℃)のような低温炎から、酸化二窒素‐アセチレン炎(約2800℃)のような高温炎まで、分析対象となる元素によって使い分ける。以上三つの方法による測定は、炎光部、分光部、測光部とも基本的な構成がほぼ同じであり、装置が簡単で、かつ高感度な分析が可能であることから、もっとも広く利用されている分析法の一つである。
[高田健夫]