改訂新版 世界大百科事典 「炭鉱集落」の意味・わかりやすい解説
炭鉱集落 (たんこうしゅうらく)
炭鉱の開発によって形成された集落。広義には鉱山集落のなかに含まれる。大きなものは炭鉱町とか炭鉱都市などと称する。日本では,明治の産業革命以降,九州の筑豊炭田や北海道の石狩炭田などに数多く形成され,〈ぼた(ずり)〉や炭住街などの特色ある景観を各地に展開した。また,石炭は層をなしているため,採掘現場の移動に従って,集落も一定方向に漸移する場合がみられる。筑豊の飯塚,田川,直方,山田,中間,石狩の夕張,美唄(びぱい),芦別,赤平,歌志内などは代表的な炭鉱都市で知られた。また,宇部や大牟田は,炭鉱開発を基盤に工業都市へと発展した。しかし,石油,原子力の開発などによるエネルギー革命,出炭量の盛衰の影響を受けやすく,1950年代後半以降には,エネルギー革命による石炭業界不況で炭鉱閉山が続出し,大きな社会問題となった。歌志内や山田は,市制都市とはいえ,炭鉱閉山で人口が1万人台にまで減少した(山田は2006年の合併で嘉麻市となる)。長崎港外の端島(はしま)は,軍艦島の名で知られた炭鉱の島であったが,74年1月の閉山で無人のゴースト・タウンと化した。存続してきた北炭夕張の夕張新鉱や三井三池の有明鉱なども,80年代に入り,坑内火災の大事故がみられ,炭住街を揺るがした。
執筆者:川崎 茂
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報