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坑内火災 こうないかさいmine fire

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

坑内火災
こうないかさい
mine fire

坑内で発生する火災鉱山炭鉱坑内には坑木,板,布,油脂類,爆薬など,可燃性,引火性のものがいろいろある。特に炭鉱においては炭層自体が可燃性であるから,坑内災害中,ガス・炭塵爆発に次いで恐ろしいものである。炭鉱の坑内では一般に強制通気が行われているから,いったん火災が起ると延焼速度が大きく,直接消火が困難である。爆発を伴わないかぎり人員の被害はあまりないが,これによる損失炭量が莫大であるばかりでなく,消火のために密閉,水没などの処置をすればその区域の採炭は行うことができず,出炭に対する影響は甚大である。

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デジタル大辞泉の解説

こうない‐かさい〔カウナイクワサイ〕【坑内火災】

炭鉱・鉱山などの坑内で起こる火災。石炭などの自然発火、ガス・炭塵(たんじん)の爆発、機械設備・電気設備・灯火などの欠陥が原因。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

坑内火災
こうないかさい

炭鉱、鉱山などの坑内で発生する火災。これらの坑内には石炭、硫化鉱物、坑木、機械油その他の可燃物があり、かつ一定の通気が行われているので、火災が発生すると急速に延焼して重大災害となるおそれがあり、坑内火災の予防は重大な保安問題である。原因は石炭の自然発火によるものが大部分を占め、そのほか原動機の過熱、ベルトスリップ、漏電などで、裸火などの失火によるものはほとんどない。
 石炭は空気に触れると、酸素を吸収してゆっくりと酸化して酸化熱を発生する。熱の放散速度と酸化の発熱速度がつり合っていれば石炭の温度は上昇しないが、発熱速度のほうが大きいと、石炭の温度はしだいに上昇し、それに伴って酸化速度もさらに高まり、石炭は高温になって、ついには発火するに至る。このような現象を石炭の自然発火という。自然発火性は炭質、環境条件、採掘方法など多くの条件に左右され、これらを十分考慮して、防止対策を行わなければならない。自然発火は硫化鉱物あるいは機械油で汚れたぼろ布の堆積(たいせき)から発生することもある。
 石炭の自然発火でもその他の坑内火災でも一酸化炭素その他の特殊なガスを発生するので、排気中の一酸化炭素を精密な分析計器で連続的に監視することによって、早期に発見することができる。発見が手遅れになると、大規模な火災に拡大するおそれがあるので、ガス検知装置を設けるほか、危険のおそれのある箇所の巡視を行うなどによって早期発見に努めている。火災発生のおそれのある箇所には消火器、水道管、消火ホースなどの消防用具を備え、万一出火した場合はただちに消火に努めなければならない。
 自然発火以外の坑内火災は、初期段階ならば素面で消火活動ができるが、炭層内または採掘跡の自然発火はその部分への注水などでは消火しにくい。自然発火または坑内火災が拡大するおそれがある場合は、酸素呼吸器を着装した鉱山救護隊員の活動により、危険区域の入・排気坑道を密閉して通気を遮断して消火する。密閉の時期を誤ると、内部でガス爆発が発生することがある。密閉に失敗したときは、坑口から河川水などを流し込んで火災区域を全面的に水没させて消火する。水没すると坑内施設が荒廃しやすく、消火後に水を抜いて取明けするのに苦労するので、これは最後の手段である。坑内火災には予防対策と早期発見対策の充実がもっとも重要である。
 大規模な坑内火災の例としては、1973年(昭和48)5月29日常磐(じょうばん)炭鉱西部坑で石炭の自然発火から坑内火災となり、燃焼ガスの中毒で死亡3人、重軽傷16人を生じ、さらに消火作業中に落盤で死亡1人を生じた。1975年11月27日には北海道の幌内(ほろない)炭鉱で、ガス突出後にガス爆発を発生し、死亡24人、重軽傷7人を生じ、さらに坑内火災となり消火のため全坑を水没させた。これはのちに揚水取明けし、採炭を再開した。1981年10月16日には北海道の夕張新炭鉱で、ガス突出後にガス爆発を発生し、死亡93人、重軽傷39人を生じ、さらに坑内火災となり、消火のため全坑を水没させた。後日原因調査のため揚水取明けしたが、検討の結果閉山した。[房村信雄]

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