無線方位測定機(読み)むせんほういそくていき(英語表記)radio direction finder

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

無線方位測定機
むせんほういそくていき
radio direction finderradio compass

無線局から到来する電波の方向を測定する装置。自動方向探知機automatic direction finder(略称ADF)、または単に方向探知機direction finder(略称DF)ということもある。海上を航行する船舶は、位置のわかっている陸上の無線局からの電波をこの受信装置で受けて位置を決定できる。円形の枠型アンテナを電波の到来方向に対して回転させると、到来方向が枠の面に直角のときに起電力がゼロとなり、平行のとき最大となる8字形の指向特性を示す電圧が得られる原理による。
 初めて使われたのは1910年ごろといわれる。その後、第一次世界大戦中、軍事上の必要から急速に発達し、1921年ごろから一般の商船にも用いられるようになった。1948年の「海上における人命の安全に関する条約」により、1600総トン以上の国際航海をするすべての船舶に装備が義務づけられた。しかし、精度のよい航法システムが多く開発され、GMDSS(全世界的海上安全制度)によって救難システムが整備されたので、急速に過去の装置となり、2000年の「海上における人命の安全に関する条約」の改正により、この装置の装備の義務づけは廃止された。そのため、全国の無線方位信号所(中波)も2006年(平成18)には廃止されている。[飯島幸人]

GMDSS

Global Maritime Distress and Safety Systemの略称。海上の遭難者を速やかに、効果的に救助するために、沿岸国が自国周辺の一定の海域について捜索・救助の責任を分担するとともに、関係各国で海難救助活動の協力や調整などを行うことを定め、世界的な捜索救助体制を創設すべく1979年に結ばれたSAR条約International Convention on Maritime Search and Rescueが、1985年6月に発効した。GMDSSは、この条約の主旨を実現するために、国際海事機関で開発が決定された通信システムで、新しいすべての船舶に1991年以後、従来の遭難通信システムにかえて装備されている。従来のシステムの欠点として、(1)無線電話と無線電信に分かれていて相互の連絡がない、(2)遠い洋上からSAR機関への連絡が困難、(3)モールス通信など旧技術に依存しているのでマニュアル操作が多く、信頼性に欠ける、などがあげられるからである。
 GMDSSの通信システムは地上通信システムと衛星通信システムに大別され、いずれも自動通信が可能である。基本的な通信システムは、デジタル選別呼出し、中波・短波・VHFの各無線電話、狭帯域直接印刷電信、航海テレックス、レーダートランスポンダー、インマルサット静止衛星とコスパスサーサット周回衛星の通信装置である。全海域をA1、A2、A3、A4の四つの航行区域に分け、船舶は航行区域ごとに機器の搭載条件が決められている。1999年2月1日からすべての船舶に装備が強制されている。[飯島幸人]

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