扁形(へんけい)動物門条虫綱円葉目テニア科に属する寄生虫。世界各地に分布する。体長3~6メートル、体幅1.3センチメートル、片節数は1000節に達する。頭節には4個の吸盤を備えるが鉤(かぎ)をもたないのでカギナシサナダともよばれる。老熟片節の構造は有鉤条虫に似るが、子宮の分枝が多く20対以上になる点で異なる。
成虫はヒトを固有宿主とし、その小腸内に寄生する。腸内で片節が切れて糞便(ふんべん)とともに排出される。片節は活発に動き、卵がさかんに放出される。このような卵が餌(えさ)とともに中間宿主のウシに食われると、小腸上部で孵化(ふか)した幼虫は腸壁に侵入し、血流あるいはリンパ流にのって筋肉に運ばれ、乳白色アズキ大の嚢虫(のうちゅう)を形成する。これを無鉤嚢虫または牛嚢虫といい、袋の中には4個の吸盤を備えた頭節ができる。ヒトがこのような嚢虫の寄生した牛肉を生(なま)で、あるいは加熱不完全のまま食べると感染し、2~12週後に片節を排出する。症状はほとんど現れないが、ときに腹部不快感、腹痛、下痢などをおこす。また、片節が自動的に肛門(こうもん)から出ることもあり不快感を与える。有鉤条虫のようにヒトが中間宿主となって嚢虫を宿すことはない。
[町田昌昭]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…条虫綱Cestodaに属する扁形動物の総称。すべての種類が寄生性で,いずれの発育段階においても消化管を有しないという特徴がある。人体寄生のものは,成虫が通常ヒトの腸管内に寄生して,腹痛や下痢,栄養障害などを起こす。これらはすべて多節ジョウチュウで,1個の頭節scolexと数個ないし数千個の片節(体節)proglottideとからなり,全長10mに達するものがある。それらのあるものは真田紐(さなだひも)に似ているところから,この紐が一般に使用されるようになった江戸時代ころから,ジョウチュウはサナダムシと呼ばれるようになったという。…
…囊尾虫またはキスチケルクスcysticercusともいう。ジョウチュウ類のうちのムコウジョウチュウ(無鉤条虫=ウシジョウチュウ)やユウコウジョウチュウ(有鉤条虫=ブタジョウチュウ)などの幼虫。エンドウ豆くらいの大きさ。…
…幼虫は多くは六鉤幼虫(オンコスフェラonchosphaera)であり,第1中間宿主または第2中間宿主を移行しながら変態し,終宿主に食われてから成体になる。ムコウジョウチュウ(無鉤条虫)Taeniarhynchus saginatus,ユウコウジョウチュウ(有鉤条虫)Taenia solium,コウセツレットウジョウチュウ(広節裂頭条虫)Diphyllobothrium latumなどがある。【今島 実】。…
※「無鉤条虫」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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