日本大百科全書(ニッポニカ) 「焼きなまし」の意味・わかりやすい解説
焼きなまし
やきなまし
annealing
材料を適当な温度に加熱して、しばらく保持したのち、徐冷する操作を焼きなまし(または焼鈍(しょうどん))という。狭義では硬いものを軟らかくすることを意味するが、広義では次のように各種の目的で行われる処理を総称する。
(1)拡散焼きなまし(均質化焼きなまし) 凝固したままの材料は、化学組成が不均一なので、融点直下の温度で加熱して原子の相互拡散を行わせて、組成を均質にする。この操作を拡散焼きなましという。
(2)完全焼きなまし 材料を圧延法や伸線法によって加工すると一般に硬くなる。これを適当な温度に加熱して、加工の際に導入された各種の格子欠陥を消滅させ、完全に軟らかい状態にすることを完全焼きなましという。この操作によって材料の組織は、ひずみのない等方的な結晶の集合体に生まれ変わる。
(3)球状化焼きなまし 異種の板状結晶が交互に重なり合った層状組織を、適当な温度で加熱すると、界面張力の作用によって一方の相が球状の分散相になる。これを球状化焼きなましといい、靭(じん)性を向上させる目的で行われる。鉄鋼材料の重要な熱処理の一つである。
(4)応力除去焼きなまし 加工、鋳造、溶接などの際に生じた残留応力を除去するための操作である。とくに、ガラスの応力除去焼きなましは重要であって、残留応力に基づく破砕や光の複屈折を防止する効果がある。
[西沢泰二]