有価証券報告書の虚偽記載や監査報告書の不適正意見などを理由に、ただちに上場廃止には至らないものの、内部管理体制の改善が必要と取引所が判断し、投資家に継続的に注意を促す制度。指定企業は1年経過後に取引所に対して内部管理体制の報告が義務付けられる。問題がなければ指定が解除され、通常の取引銘柄に戻る。改善の見込みがないとみなされれば上場廃止になる。
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2007年(平成19)11月から東京証券取引所(東証)で導入された制度。上場会社が証券取引所の規則に違反した事案などで、その会社の内部管理体制等に問題があり、上場廃止基準には抵触しないものの、改善の必要性が高いと認められた場合は、特設注意市場銘柄に指定されることとなる。特設注意市場銘柄に指定されると、特設注意市場で、通常の上場銘柄とは区別して売買取引が行われる。
上場会社に問題が発生した場合は、上場適格性の喪失度の深刻さに応じ、大別して2種類の審査ルートがある。まず、上場廃止基準に抵触したケースの審査では、上場維持か上場廃止かがストレートに問われる。一方、上場適格性を喪失したとまではいえないケースでは、内部管理体制の問題点について、改善措置の必要性の有無などが審査される。審査の結果、問題点が比較的軽微なレベルであれば、改善報告書の提出が指示される。ただし、改善報告書の提出に応じない場合は上場廃止となる。一方、問題がより重大な場合には、特設注意市場銘柄への指定が行われる。
特設注意市場銘柄になると、指定から1年経過後に、速やかに内部管理体制確認書を証券取引所へ提出・報告しなければならない。これを受けて証券取引所では、当該会社の内部管理体制に関する審査が改めて行われる。審査の結果、改善が認められれば、特設注意市場銘柄の指定は解除され、上場が維持される。これに対して、内部管理体制確認書の提出が速やかに行われない場合や、提出された改善内容が不十分と判断された場合は、内部管理体制に問題があるものとして取り扱われる。
「問題あり」であっても、改善の見込みがあると認められる場合は指定継続となり、そうでなければ上場廃止となる。指定継続の場合は、さらに6か月経過後(特設注意市場銘柄に指定されてから1年6か月後)に再審査が行われ、問題が認められなければ指定解除となる。しかし、依然として問題があると判断された場合は、改善の見込みの有無に関係なく上場廃止となる。
つまり、特設注意市場銘柄に指定されると、1年6か月後の審査で最終的に上場維持か上場廃止かを決定することになる。このため、最終審査の段階では上場廃止のおそれがあることにかんがみ、1年6か月を経過した時点で当該銘柄は監理銘柄に指定され、投資家への注意喚起がなされる。また、特設注意市場銘柄への指定審査中や指定後であっても、改善の見込みがないと認められた場合は、その時点で上場廃止が決まり整理銘柄に指定される。
これらの制度は、市場秩序の維持や投資家の保護など、公益の確保を目ざしている。その一方で、内部管理体制に関して審査され、場合により改善措置を求められる制度が存在することは、上場会社の継続企業の前提(ゴーイング・コンサーン)に基づいた持続性・健全性を保つうえで、セーフティーネットとして機能する側面もある。
[高橋 元 2017年12月12日]
(2015-7-24)
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