狂言小歌(読み)きょうげんこうた

精選版 日本国語大辞典 「狂言小歌」の意味・読み・例文・類語

きょうげん‐こうた キャウゲン‥【狂言小歌】

〘名〙 狂言歌謡一つで、小歌節でうたわれるもの。「住吉」などリズムに乗らない、いわゆる拍子不合(あわず)で、一節の終わりに独特のユリのある美しい曲節をもつ。

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改訂新版 世界大百科事典 「狂言小歌」の意味・わかりやすい解説

狂言小歌 (きょうげんこうた)

狂言謡の一種。拍子不合(あわず)の自由リズムで,ヨワ吟の中音で始まり中音で終わるが,ユリと称する独特のバイブレーションおよびポルタメント的旋律を多用した,装飾的で優美繊巧な印象を与える謡。大蔵流では《柴垣》《十七八》《住吉》の3番,和泉流では《鎌倉女郎》《柴垣》《住吉》《春雨》《細布(ほそぬの)》《薬師》の6番が独立した謡い物ないし小舞謡としての小歌だが,ほかに特定の狂言で固有の小歌が謡われる演目に,《花子(はなご)》《金岡》《御茶の水》《石神》《清水座頭》《枕物狂》《節分》《鳴子》などがある。なお,もともと歌ではない文句を即興的に小歌のフシでうたう場合を小歌節と称し,《釣狐》で狐が浮かれるところや《昆布売(こぶうり)》の売り声などに用いられている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「狂言小歌」の意味・わかりやすい解説

狂言小歌
きょうげんこうた

能狂言なかで歌われる小歌。狂言の流派によって,歌そのものや歌詞異同があるが,各流の古い書きとめの類から集められた曲は約 180曲。狂言が固定化された室町時代末期から江戸時代初期の小歌と共通する点があり,当時の歌謡を考えるうえで大切な資料。『閑吟集』などとの前後関係については,一概にいえないが,曲によっては『閑吟集』より新しく,江戸時代初期の歌謡を取入れている場合もある。

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