玳皮盞(読み)タイヒサン

デジタル大辞泉 「玳皮盞」の意味・読み・例文・類語

たいひ‐さん【×玳皮×盞/×××盞】

《「玳皮」は玳瑁たいまい甲羅鼈甲べっこう)の意》中国江西省吉州窯で宋代から元代にかけて作られた天目てんもく茶碗うわぐすり調子鼈甲に似ることに由来する、日本での呼称鼈盞べっさん。吉州天目

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精選版 日本国語大辞典 「玳皮盞」の意味・読み・例文・類語

たいひ‐さん【玳皮盞】

〘名〙 天目茶碗一種。鉄質の天目釉(てんもくゆう)の茶碗で、中国江西省吉州窯の産。南宋時代のものに優品がある。玳皮(鼈甲(べっこう))風の釉の調子による名。粗製のものであったが、室町時代に渡来してから、茶人の間で珍重された。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「玳皮盞」の意味・わかりやすい解説

玳皮盞
たいひさん

中国産の天目茶碗(てんもくぢゃわん)の一種。玳玻盞、態皮盞などとも書く。南宋(なんそう)から元代(12~14世紀初頭)にかけて吉州窯(きっしゅうよう)(江西省吉安市永和鎮)で焼造された独特の茶碗。玳皮とは玳瑁(たいまい)の甲(鼈甲(べっこう))の意で、釉(ゆう)調が鼈甲に似ていることに由来する日本での呼称である。日本では室町時代すでにこの名が用いられており、鼈盞(べっさん)または吉州天目ともよばれ、建盞(けんさん)と双璧(そうへき)をなすものである。淡い黄白色の素地(きじ)に黒釉(こくゆう)と兎(う)の斑(ふ)が表れた灰釉をかけ合わせて特有の鼈甲調の釉色を得るが、これには2種類あり、単に二釉をかけ合わせたものと、初めに黒釉を全面に施し、その上に型紙を使って兎の斑釉をかけて文様をつくるものとがある。後者では梅花(ばいか)天目、鸞(らん)天目、文字天目などが知られ、また木の葉を黒釉地に貼(は)り付けて焼き、精巧な文様を表した木の葉天目も珍重されている。器形は柔らかい調子のものが多く、高台が極度に低く簡略化されている。日本の伝世品に優品がみられ、室町時代の唐物(からもの)趣味の深さを示す資料となっている。

[矢部良明]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「玳皮盞」の意味・わかりやすい解説

玳皮盞
たいひさん
Dai-pi-zhan

吉州天目鼈盞 (べっさん) ,また日本では玳皮天目とも呼ばれる。中国,江西省の吉州窯で宋代に焼かれた陶磁器のうち,天目釉をかけた,器の表面に鼈甲 (べっこう) のような文様のあるものをいう。内面には花や尾長鶏などの文様をつけたものもある。また高台 (こうだい) は非常に小さい。日本の伝世品に優品が多く名物に選定されている。

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世界大百科事典(旧版)内の玳皮盞の言及

【天目】より

…晋時代(3~5世紀)の越州窯では漆黒の黒釉がかなり用いられ,唐代(7~9世紀)には華北でも行われ,宋代(10~13世紀)には華北・華南の各地に天目を焼く多くの窯が興された。福建省建窯の建盞(けんさん)はその代表的なもので,日本で珍重される油滴天目,曜変天目,禾目(のぎめ)天目などを焼き,江西省の吉州窯では,黒釉とわら灰釉を二重がけした玳皮盞(たいひさん)や木の葉を釉化して焼きつけた木葉天目などが作られている。また華北一帯の磁州窯系の窯では,広く河南天目と呼ぶ黒釉のかかった碗,盤,瓶,壺などが作られ,河北省の定窯では黒定,紅定と呼ぶ天目釉のかかった碗,瓶,壺などが焼造された。…

※「玳皮盞」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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