吉州窯(読み)キッシュウヨウ(英語表記)Jí zhōu yáo

デジタル大辞泉 「吉州窯」の意味・読み・例文・類語

きっしゅう‐よう〔キツシウエウ〕【吉州窯】

中国江西省吉安市永和鎮にあった陶磁の古窯。六朝りくちょう時代には古越磁、唐宋時代には白磁青磁天目てんもくが焼かれた。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「吉州窯」の意味・読み・例文・類語

きっしゅう‐ようキッシウエウ【吉州窯】

  1. 〘 名詞 〙 中国江西省吉安府廬陵県永和鎮にある陶磁器の窯(かま)。唐代から現代に至るまで続いた華南での重要な窯で、南宋時代に作られた玳玻盞(たいひさん)および砕器と呼ばれる青磁が有名。中でも玳玻天目茶碗日本で珍重された。永和窯。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「吉州窯」の意味・わかりやすい解説

吉州窯 (きっしゅうよう)
Jí zhōu yáo

中国,江西省吉安市永和鎮にあった窯。唐末五代のころから越州窯風の青磁や定窯風の白磁,黒磁を焼造した。宋代には磁州窯風な白地黒花文の精緻な作品なども知られ,また抹茶法による喫茶の流行に伴い,天目茶碗も焼造された。天目では日本で玳玻盞(たいひさん),鼈盞(べつさん)と呼ぶ黒釉の上に失透釉を掛け鼈甲状の釉調のものが名高く,また剪紙(せんし)(切紙)の文様を黒釉上に貼り,失透釉を掛けて焼造した梅花天目,竜天目,鸞(らん)天目,文字天目なども珍重された。とくにケイ酸分を多く含む実物の木の葉を黒釉上に置いて焼成し,釉化して木の葉の文様を表す木の葉天目は,この窯の特異な作品である。日本には室町時代以来優れた作品が請来され伝存する作品も多い。なおこの窯の作域の広さ,多彩な技法の展開には南北中国窯技の交流の跡がみられ,南宋以降,江西省景徳鎮窯に大きな影響を与え,とくに絵画的文様を主体とする青花磁器(染付)興隆の背景をなす窯として注目されている。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「吉州窯」の意味・わかりやすい解説

吉州窯
きっしゅうよう

中国、江西(こうせい/チヤンシー)省吉安(きつあん/チーアン)市永和鎮にある古窯。この地は隋(ずい)時代以来吉州に属していたところから吉州窯の名がつけられた。明(みん)時代初めの曹昭は『格古要論』のなかで吉州窯の名称を用いており、「吉州窯、出今吉安府盧陵県永和鎮、其色興紫定器相類、体厚而質粗、不甚直銭」と述べ、15世紀初頭の段階ではすでに粗雑な器皿を焼く地方窯に堕していたことをうかがわせる。考古学的な調査によってもこの傾向は認められており、吉州窯はおもに南宋(なんそう)から元(げん)にかけての13、14世紀に隆盛していたことが知られるようになった。俗に日本では吉州天目(てんもく)とよばれる玳皮盞(たいひさん)は、黒釉(こくゆう)と黄釉との二重掛けによって人為的に文様を表現し、絶妙な天目茶碗(ちゃわん)を完成させて名声を博した。このほか華南ではいち早く透明釉下に鉄絵の具で文様を巡らす鉄絵を試み、黒釉掻(か)き落し法を行い、低火度の緑釉を施すなど、新技術に対してまことに意欲的であった。

[矢部良明]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「吉州窯」の意味・わかりやすい解説

吉州窯【きっしゅうよう】

中国,江西省吉安県永和鎮にあった窯。古く青磁を焼成したが,宋時代には白磁や黒釉磁を主要製品とした。日本で有名な茶黒色の釉に,白濁した黄釉を施してある天目茶碗,玳玻盞(たいひさん),鼈盞(べっさん),木葉(このは)天目,梅花天目などはこの窯の南宋の製品。南宋末〜元時代にかけては,白い素地上に茶〜黒色の鉄絵具で文様を描く鉄絵を主に焼いた。
→関連項目鉄絵

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「吉州窯」の意味・わかりやすい解説

吉州窯
きっしゅうよう
Ji-zhou-yao

中国,江西省吉安市永和鎮にあった窯で,唐代から清代まで存続。唐代には越州窯に劣らない淡いオリーブ色の青磁を生産し,北宋代には白磁,絵高麗など,南宋代には白磁や玳皮盞 (たいひさん) を焼き,明・清代には染付,白磁を制作した。ことに日本では玳皮盞の産地として著名

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の吉州窯の言及

【天目】より

…晋時代(3~5世紀)の越州窯では漆黒の黒釉がかなり用いられ,唐代(7~9世紀)には華北でも行われ,宋代(10~13世紀)には華北・華南の各地に天目を焼く多くの窯が興された。福建省建窯の建盞(けんさん)はその代表的なもので,日本で珍重される油滴天目,曜変天目,禾目(のぎめ)天目などを焼き,江西省の吉州窯では,黒釉とわら灰釉を二重がけした玳皮盞(たいひさん)や木の葉を釉化して焼きつけた木葉天目などが作られている。また華北一帯の磁州窯系の窯では,広く河南天目と呼ぶ黒釉のかかった碗,盤,瓶,壺などが作られ,河北省の定窯では黒定,紅定と呼ぶ天目釉のかかった碗,瓶,壺などが焼造された。…

※「吉州窯」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android