日本大百科全書(ニッポニカ) 「現代病」の意味・わかりやすい解説
現代病
げんだいびょう
都市化、産業化が進むとともに目だってくる疾病のこと。医学上の用語としてよりは、ジャーナリズムによってつくられた用語。具体的には、公害病、生活習慣病(成人病)、職業病などで、呼吸器疾患、高血圧、心臓病、動脈硬化、消化器疾患、不眠症、癌(がん)、筋肉疾患などに及んでいる。これらの背景としては次のような点があげられる。(1)技術革新による労働の変化で重筋肉労働は減ったが、人間の精神や生体のリズムに反するような労働が増えてきたこと、(2)都市を中心にした自然の破壊をはじめとする環境の悪化、(3)生活習慣、食習慣などの急激な変化、(4)労働、生活の両面にわたって心理的緊張を高めるような事態が増えてきたこと、である。ただ、これらの背景のさらに根底には、行き詰まりつつある資本主義の問題性があることを強調する見方もある。
このほかに、とくに情緒障害、神経疾患や「管理病」「ポックリ病(青壮年急死症候群)」「花粉症」「化学物質過敏症」、児童の肥満などのように、現代の状況を浮き立たせるような病気に特定して意味させるような使い方もある。いずれにしても、一方で高齢化社会の到来がいわれながら現代病の蔓延(まんえん)をみている現代社会をどうイメージするかといった課題や、現代のさまざまな社会病理現象と現代病との関連の究明という課題が残されている。
[真田 是]
『立川昭二著『病気の社会史』(1971・日本放送出版協会)』▽『読売新聞社健康・医療問題取材班編『現代病の周辺』(1993・読売新聞社)』▽『大野良之・柳川洋編『生活習慣病予防マニュアル改訂2版』(2001・南山堂)』