経塚に埋納するため,粘土板に錐,篦(へら)などで経典を書写して焼いたもの。〈かわらぎょう〉とも呼ぶ。方形,または方形に近い平板状が多い(縦約17~27cm,横約10~30cm,厚さ約1~3cm)。通常表裏に界線・罫線を引き,1面10~15行が多い。界線の欄外や側面には丁付(ちようづけ)(経典の種類,順序などを識別するための簡単な記載)が記されている場合がある。なお,仏形を陽出し,経典を各仏形の胸に1字ずつ刻した特殊な例もある。経典の種類は法華経をはじめ多岐にわたり,紙本経の経塚にはあまり見られないものもある。また瓦製の仏像,仏塔,仏画,曼荼羅などを伴う場合もある。経塚の営造には,経典を弥勒の世まで伝える考えがうかがえるが,瓦経は不朽性に着目して考案されたのであろう。早い例に鳥取県の大日寺瓦経(1071)があり,その後約1世紀の間に盛行。西日本に多く,三重県の小町塚瓦経(1174),京都府の盆山瓦経,兵庫県の極楽寺瓦経(1143),岡山県の安養寺瓦経,福岡県の飯盛山瓦経(1114)など,約30ヵ所が知られている。
→経塚
執筆者:三宅 敏之
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