生活気候(読み)せいかつきこう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「生活気候」の意味・わかりやすい解説

生活気候
せいかつきこう

衣食住、すなわち人間生活に影響を及ぼす気候をいう。広義には交通や人間の健康に関係する気候の問題なども含まれる。おもなものは次のとおりである。

河村 武 2016年4月18日]

衣服気候

衣服は皮膚表面と外界の間に空気の層をつくり、その温度や湿度を一定に保つことによって、人間が暑さ寒さをしのぐ。人体は部位により皮膚温度に差異があるが、平均皮膚温度が34.5℃以上に上がるか、または30℃以下に下がると不快を感じる。このために高温な熱帯や夏には通気性があり、しかも汗を吸い取って蒸発を促す生地(きじ)や仕立てが必要になる。冬は衣服外の気温が低いので保温力の強い衣服が用いられる。衣服の保温力を表すには、2層の衣服の間に0.18℃の温度差があるとき、毎平方メートル当り毎時1カロリーの熱が衣服を通して逃げていく場合を1クロとしてクロ(clo)単位で表す。薄い衣服は1クロ、厚い冬の衣服は4クロぐらいである。睡眠時の人体は昼間の安静時よりも熱生産が下がるうえに、放熱量が増加するので、寝具は衣服よりも保温力が必要である。

[河村 武 2016年4月18日]

食物と気候

農作物の生育は気温と関係し、また魚の場合も生息に適した水温がある。そのために市場への出荷も季節性が大きい。一方、調理の方法にも、冬に鍋(なべ)料理が好まれるなどの季節の影響が大きい。近年、野菜の温室栽培や魚の冷凍などの保存加工の技術が進歩したために、昔に比べると、これらの食物の出盛り時期や旬(しゅん)が不明確になったものが多いが、それでも出荷量や価格には季節や気候による影響が大きい。他の食品でもビールやアイスクリームなどのように需要に著しい季節変化がみられるものが少なくない。

[河村 武 2016年4月18日]

住居と気候

住居は衣服とともに、気候を調節する手段である。寒冷地方の住居は、防寒のため天井、壁、床などに断熱性のよい厚い材料を用いる。窓は熱が逃げないように小さく、二重の戸がつけられている。とくに積雪の多い地方では、積雪の重量に耐えられるようじょうぶな柱が用いられるうえに、屋根は雪が滑り落ちやすいよう急傾斜になっている。熱帯地方では防暑のため、床を高くして通気をよくし、天井を高くして屋根からの熱の伝導を防ぐくふうがされている。このほか建築材料もその土地の気候にあったものが用いられることが多い。昔から風の強い地方では防風林(屋敷森)を家の周囲に設けたり、多雪地域の市街地の冬の交通路として雁木(がんぎ)がつくられるなど、さまざまの生活の知恵がみられる。

[河村 武 2016年4月18日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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