企業が秘匿する秘密情報を部外から探知・入手する企業諜報(ちょうほう)員。現在、国内・国外の各企業、とくに自動車、ハイテク産業などは生産上・営業上のノウハウを開発して、激烈な企業競争を展開しているが、競争を有利に導くためにそれらの秘密情報を不正に探知・入手する活動、いわゆる産業スパイ活動がしばしばみられる。産業スパイ活動には、国内の日本企業間で行われる場合のほか、1982年(昭和57)のIBM産業スパイ事件techscam scandalのように、日本企業が外国で外国企業から情報を入手する場合や、84年のポピバノフ事件のように、外国人が日本国内で日本企業の情報を入手する場合もしばしばみられる。いずれの場合でも、産業スパイ活動は被害企業の存亡にかかわる重大な損失をもたらすことも少なくないから、企業自身が自己防衛策を講じることの必要性はいうまでもないが、スパイ活動は法律上、不法行為として民事責任が科せられるほか、刑法上も犯罪として処罰されうる。たとえば、秘密情報の媒体である設計図、試作品、コンピュータの磁気ディスク・磁気テープなどを持ち出せば、窃盗、横領等の領得罪が成立し、これらの盗品等を受領すれば「盗品等に関する罪」にあたる。ただし、無形の秘密情報自体は財産犯の対象となりにくいため、改正刑法草案第318条は、企業秘密を部内者が第三者に漏らす行為を企業秘密漏示罪として処罰する規定を新設している。
[名和鐵郎]
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