産褥期の送り方(読み)さんじょくきのおくりかた

家庭医学館 「産褥期の送り方」の解説

さんじょくきのおくりかた【産褥期の送り方】

 お産のあとの生活の目安は、表「産後の生活カレンダー」に示したとおりですが、産褥期はいろいろな異常がおこりやすい時期です。つぎのようなことを心がけ、異常がおこらないように十分注意しましょう。
子宮復古(しきゅうふっこ)の助成
 子宮収縮してもとの状態にもどることを子宮復古といいます。子宮の収縮をよくするために、膀胱ぼうこう)や直腸充満(尿をがまんしすぎたり、便秘になること)を避け、また、悪露(おろ)(コラム「産褥期とは」)が子宮内にたまらないようにしましょう。母乳哺育(ほいく)による乳頭吸引刺激(にゅうとうきゅういんしげき)も子宮復古を促進します。腹部腰部の筋肉がゆるんでいるので、腹帯(コルセット式など)を産後6~8週間つけます。産褥体操(この項目の産褥体操)も、食欲を増進させ、血液循環をよくして、全身の筋肉の回復を助けます。
●感染予防
 全身の清潔と、局所の感染予防にとくに気をつけます。産褥期は、汗、乳汁(にゅうじゅう)、悪露などで不潔になりやすく、細菌感染も受けやすいので、全身の清潔と着衣の交換が必要です。
 産褥1~2日は全身清拭(せいしき)、産褥3日ごろからシャワー浴を行ないます。
 排尿・排便後は、局所の消毒と悪露交換(あて綿をとりかえる)を必ず行ない、外陰(がいいん)とその周囲を清潔にして感染を防ぎましょう。そして、手指をよく洗うこともたいせつです。
●乳汁分泌(ぶんぴつ)の促進
 母乳は、乳房(にゅうぼう)マッサージ、赤ちゃんの哺乳、栄養の増進、精神の安静、休養などにより、よく出るようになります。また、食事は、たんぱく質、脂肪、カルシウム、ビタミンA、ビタミンB1などの栄養素を十分とりましょう。
 産褥1~3日ごろは、分娩(ぶんべん)による疲労や、情緒の不安定、神経過敏といった状態になっているので、家族は家庭内の問題をもちだしたりせず、面会人を制限するなどして、精神的負担をかけないようにし、安静と睡眠を十分とるようにします。
 分娩直後、お母さんと赤ちゃんができるだけ早く接触することは、母児間の愛着形成や、お母さんの精神的安定のためにもたいせつです。
 乳房マッサージの目的は、乳腺(にゅうせん)刺激により血行をよくし、乳汁を出やすくして、うっ滞(たい)(たまってしまうこと)による痛みを軽くし、乳腺炎(にゅうせんえん)などを予防することです。赤ちゃんの乳頭吸引刺激も母乳の出をよくします。
●日常生活の注意
 産道(さんどう)の損傷や合併症がなければ、分娩後6~12時間で歩行を始めます。産褥第3週ごろには床を離れ、入浴しましょう。外出は約1か月後とし、仕事や旅行などは2か月をすぎてからにします。産後第6~7週ごろになり、全身および子宮・腟(ちつ)・外陰の回復がよければ、正常生活にもどります。
 産褥初期には、腹壁(ふくへき)がゆるんでいるために、排尿しにくいことがあります。分娩後6時間たっても自然排尿ができなければ、カテーテルで人工排尿します。分娩後3日以上排便がないときには、子宮の回復を妨げますので、浣腸(かんちょう)や緩下剤(かんげざい)などで便を出すようにします。
 また、産褥期のお母さんは、赤ちゃんを得た喜びと、分娩による心身の疲労や、育児に対する不安などから、精神的に不安定な状態にあります。部屋を静かにして、家族以外の面会を制限し、睡眠・休養の時間を多くとるようにしましょう。
●産褥体操(さんじょくたいそう)
 妊娠・分娩によってのびた腹部や骨盤(こつばん)のまわりの筋肉の回復を早め、血液のめぐりをよくして、下腹部のうっ血を防ぎ、子宮・腟・外陰の回復を助ける効果があります。
 分娩の翌日から、簡単な運動を始めましょう。まず、胸式呼吸と足の運動から始め、2日目は、腹式呼吸・頭を起こす運動・上肢(じょうし)の運動・足の運動を行ないます。産褥3~4日目には、腹筋の運動・上肢の運動・足の運動・骨盤と関節の運動、産褥5~6日目には、下半身の運動・骨盤をよじる運動と、日数が進むにつれて運動の程度を強め、回数も増やします。運動は一度に10回くり返し、これを1日2回ぐらい行ないます。産褥2か月間は、できるだけ続けましょう(図「産褥体操の一例(1)」図「産褥体操の一例(2)」図「産褥体操の一例(3)」)。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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