産褥精神障害(読み)さんじょくせいしんしょうがい(その他表記)Puerperal psychosis

六訂版 家庭医学大全科 「産褥精神障害」の解説

産褥精神障害
さんじょくせいしんしょうがい
Puerperal psychosis
(女性の病気と妊娠・出産)

どんな病気か

 それまでまったく精神的な障害がみられなかったのに、出産をきっかけに気分が落ち込んだり、あるいは逆に興奮状態になったりすることがあります。これは出産というストレスに対する反応で、一般的に数時間から数日で症状がなくなります。

 なかには、もう少し長期間にわたって症状が続く場合があり、これにはマタニティー・ブルーと産褥うつ病があります。

症状の現れ方

●マタニティー・ブルー

 症状としては、疲労感、食欲不振、涙もろさ、不安感、頭痛(頭が重い)、不眠、いらいら、混乱(どうしていいか途方にくれる)、集中力の欠如緊張、気分の不安定、などが現れます。日本人では約10%に認められ、産後育児不安に伴う正常な反応と考えられています。

 症状の出やすい時期は産後10日以内で、ほとんどは数日でなくなります。

●産褥うつ病

 人によっては、産後1~2カ月の間に徐々に元気がなくなり、家事や育児をやりたくなくなり、非常に気分が落ち込んでしまうことがあります。マスコミなどで産褥うつ病、あるいは育児ノイローゼといわれているものがこれです。

 これは育児に対する過度の不安、母親としての無力感、孤独感、家族との人間関係の葛藤が生じた場合、育児による疲労と重なって気持ちの不安定さが増加するためと考えられています。

 時間の経過とともに、育児に対する慣れ、生活上の工夫、家族の協力などにより徐々に回復することも数多くありますが、なかには精神障害になったり、子どもの虐待(ぎゃくたい)へ至ることもあります。

 原因はまだよくわかっていませんが、出産に伴う母体内での急激なホルモン環境の変化との関連が考えられています。

治療の方法

 マタニティー・ブルーや産褥うつ病の一般的な対処方法としては、周囲の人は産後のこのような気分の変化を十分理解して、本人を決して叱ることなく、温かく見守りながら、同時に睡眠を十分にとってもらい、心身の疲労・負担を取り除くために協力することがとても重要です。

 また、保健所などで育児相談をしたり、同じ環境にあるお母さん同士のコミュニケーションをとることも有効です。どうしても解決できない場合は、早めに精神科医に相談してください。

亀井 良政

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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