生物において必要のために器官の原基が生じ,また既存の器官が使用によって発達すれば,それらの性質が子孫に伝わり,使用されないで発達しなければ子孫でしだいに退化し,ついには消失するという説。つまり獲得形質遺伝の説であり,生物の適応の生成を説明するのにつごうよくはあるが,現在の生物学では認められない。ラマルクに帰されることが多いが,同時代のE.ダーウィンも説いており,むしろ両者よりはるか前からの一般的観念であったとされる。C.ダーウィンは《種の起原》(第5章)で自然淘汰と組み合わされる副次的要因として用不用の効果をあげ,同書の最終版では自説への反論に答えるためにこの要因をいっそう強調している。彼と同時代および以後にH.スペンサー,E.H.ヘッケル,またラマルク派の学者たちが用不用説を支持した。スペンサーの意見には用不用説が彼の社会進化論につごうのよいことが影響しているといわれる。
執筆者:八杉 龍一
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…ギリシア時代のヒッポクラテスやアリストテレスもこれに関連した議論をしている。下って18~19世紀のJ.B.deラマルクは彼の進化論を展開するにあたって獲得形質遺伝を肯定していて,キリンの首が長い理由を説明する際に採用した用不用説(使用する器官は発達し,不使用器官は退化する)は有名である。19世紀のC.ダーウィンやE.H.ヘッケルも肯定的立場にあった。…
…生物体において,進化または飼育栽培の過程で十分発育しなくなり,同時に機能を失って,なごりをとどめるだけとなった器官。ある器官が進化的に発達しつつあるものか,退化しつつあるものかは,類縁の近い他種の生物のもつ相同器官と対比することによって間接的に知ることができる。 成体において無用化している痕跡器官には,動物ではヒトの尾椎,盲腸の虫垂,耳を動かす筋肉,ウシの犬歯,ウマの第3指以外の中足骨,モグラや洞穴性両生類の目,ウズラの前肢第1指のつめなど,植物ではキク科植物の花の中心部の花弁,雌雄異株植物の雄花にあるめしべなど,さまざまな次元で多数の例がある。…
※「用不用説」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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