田中義成(読み)たなかよしなり

精選版 日本国語大辞典 「田中義成」の意味・読み・例文・類語

たなか‐よしなり【田中義成】

史学者。江戸生まれ。太政官修史局の繕写生から刻苦勉励して史学を修め、史誌編纂員、史料編纂員、史料編纂官を歴任し、東京帝国大学教授を兼任南北朝、戦国時代史泰斗であった。著「南北朝時代史」「足利時代史」など。万延元~大正八年(一八六〇‐一九一九

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「田中義成」の意味・わかりやすい解説

田中義成
たなかよしなり
(1860―1919)

明治~大正期の歴史家。安政(あんせい)7年3月15日江戸に生まれる。1876年(明治9)太政官(だじょうかん)修史局二等繕写生(ぜんしゃせい)(写字生)となり、88年帝国大学書記、92年同文科大学史誌編纂(へんさん)委員、95年史料編纂掛編纂委員などを歴任して史料収集と編纂に努めた。また92年からは助教授を兼任して国史などを講義し、綿密な史料調査・検討に基づく実証的な論考を発表、98年からは中世政治史研究・講義に専念した。1900年(明治33)編纂掛部長に就任(のち史料編纂会編纂主任)、以後大日本史料』第六編の編纂に従事。03年文学博士となる。19年(大正8)史料編纂官を辞任、同年11月5日に病没した。

 1903年からの『大日本史料』第六編之三の編纂過程では、北朝の光明(こうみょう)天皇も天皇と認め、南北両朝併立を主張。11年からの南北朝正閏(せいじゅん)論争により、南朝を正統として吉野朝時代の名称を用いることが大勢を占めるようになったのちも、南北朝併立論を貫いた。講義は、没後『南北朝時代史』(1922・明治書院)、『足利(あしかが)時代史』(1923・同)、『織田時代史』(1924・同)、『豊臣(とよとみ)時代史』(1925・同)としてまとめられた。とくに『南北朝時代史』はその後の南北朝期研究の出発点となった。

[権平慶子]

『永原慶二・鹿野政直編『日本の歴史家』(1976・日本評論社)』

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朝日日本歴史人物事典 「田中義成」の解説

田中義成

没年:大正8.11.4(1919)
生年:万延1.3.15(1860.4.5)
明治大正期の歴史家。文学博士。史料編纂官。江戸築地に生まれる。父は一橋家家臣。明治7(1874)年,太政官正院歴史課に写字生として雇われ,生涯を修史事業に尽くした。38年東京帝大文科大学史料編纂官兼文科大学教授。『大日本史料』の出版に努め,室町幕府から織豊政権にいたる政治史の骨格を確立した。苦学力行の人物で,史料批判の識見が優れ,のちの東大史料編纂所の学風を確立するのに貢献した。<著作>『南北朝時代史』『足利時代史』『織田時代史』『豊臣時代史』<参考文献>『東京帝国大学学術大観』,辻善之助先生誕生百年記念会編『辻善之助博士自歴年譜考』,三上参次『明治時代の歴史学界』

(秋元信英)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「田中義成」の意味・わかりやすい解説

田中義成
たなかよしなり

[生]万延1(1860).3.15. 江戸
[没]1919.11.5. 東京
日本史家。 1876年太政官修史局繕写生を振出しに,東京大学で史料編纂官として日本史史料の採訪,編纂,講義に専念。『大日本史料』創刊に尽力するとともに,中世史上の「吉野朝時代」という用語を排して「南北朝時代」の実態を究明した。主著『南北朝時代史』 (1922) ,『足利時代史』 (23) ,『織田時代史』 (24) ,『豊臣時代史』 (25) はいずれも講義録である。 (→南北朝正閏論 )

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「田中義成」の解説

田中義成 たなか-よしなり

1860-1919 明治-大正時代の日本史学者。
安政7年3月15日生まれ。明治38年東京帝大史料編纂官(へんさんかん)兼同帝大教授。「大日本史料」などの編修にあたり,実証主義の立場から中世政治史を研究,南北朝並立の主張をつらぬいた。大正8年11月4日死去。60歳。没後講義内容が「南北朝時代史」「豊臣時代史」などとして刊行された。江戸出身。

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