田舟(読み)タブネ

デジタル大辞泉 「田舟」の意味・読み・例文・類語

た‐ぶね【田舟】

深田に浮かべて、肥料や刈り取った稲を押し運ぶのに用いる小舟弥生時代から用いられている。
水郷や沼などで、乗用農作物運搬などに使用される平底の簡単な作りの舟。

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精選版 日本国語大辞典 「田舟」の意味・読み・例文・類語

た‐ぶね【田舟】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 彌生時代から使われている水田用の小舟。苗や刈り取った稲、肥料などを積んで、水田上を押し運ぶもの。《 季語・夏 》
    1. [初出の実例]「静さは田船の垢に水すまし」(出典:俳諧・百合の華(1781))
  3. 沼や水郷などで、農作物の運搬や日常のゆききなどに用いる舟。一枚棚の簡素な箱造りを用いるものが多い。
    1. 田舟<b>②</b>
      田舟
    2. [初出の実例]「水中有田舟に乗而行。〈略〉上は田舟也」(出典:杜詩続翠抄(1439頃)一九)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「田舟」の意味・わかりやすい解説

田舟
たぶね

稲作に用いる農具の一種。湿田で刈り取った稲を数把のせて畔(あぜ)に運んだり、苗代からとった苗を運んだり、あるいは水田の代掻(しろか)きに使う。苗舟(なえぶね)、代掻き田舟ともよぶ。いずれも綱をつけて引くか、把手(とって)をつけて押して使用する小形のもので、木製である。

 古代の田舟には2種ある。一つは舟形につくられた小形の丸木舟で、弥生(やよい)時代のものが静岡県山木(やまき)遺跡から発見されている。その二は平面隅丸(すみまる)長方形の大きな槽(ふね)の前後に2個ずつ棒状の把手をつくり出したもので、弥生時代のものが山木遺跡や静岡市曲金(まがりかね)遺跡から出土しており、古墳時代の類例断片が大阪府八尾(やお)市中田遺跡にみられる。容量は大きく、湿田に浮かべて滑らせるにもよく、把手を握って担うこともできる。形状が伊勢(いせ)の皇大(こうたい)神宮で八咫鏡(やたのかがみ)を奉安する御樋代(みひしろ)を納める御船代(みふなしろ)によく似ていることが指摘されている。

木下 忠・小川直之]

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改訂新版 世界大百科事典 「田舟」の意味・わかりやすい解説

田舟 (たぶね)

稲刈りのときにも水を落とすことのできないような田(沼田)で,刈り取った稲が水にぬれないように乗せるもの。底の浅い箱のような形をしているが,稲を乗せてあぜまで運ぶのに便利なように,その底は箱の長手方向に少し湾曲させてつくられている。沼田の多い地方には必ずといってよいほどあったもので,現代になってもそのような地方では,かつての木製のものにかわって合成樹脂製のものが使われている。これの使用は古くまでさかのぼり,たとえば登呂の遺跡からも出土している。もともと稲作は湿田から始められたので,このようなくふうが早くからなされていたのである。
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百科事典マイペディア 「田舟」の意味・わかりやすい解説

田舟【たぶね】

田植や稲刈のとき,水田で使用する平底の小さい舟。人は乗らず,苗や稲束の運搬に用いる。弥生(やよい)時代の登呂遺跡山木遺跡から田舟と推定される木製品が出土している。現在も諸所の沼田で合成樹脂製のものが使われている。
→関連項目農具

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「田舟」の意味・わかりやすい解説

田舟
たぶね

弥生時代後期に湿田で稲や土を運ぶために用いられた運搬具の一つ。小さな丸木舟の形をした長さ約 1m,幅約 40cm,深さ約 22cmのものと,槽 (ふね) と呼ばれる長方形にくりぬいたものの前後に棒状の突起を4個つけたものとがある。大きさは長さ約 0.7~1.3m,幅約 50cm,深さ約 20cmで,平底で取手をつけて運びやすくしてある。

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旺文社日本史事典 三訂版 「田舟」の解説

田舟
たぶね

湿田での作業のときに用いられる小型の舟状運搬具
湿田に浮かべて刈り入れた稲や肥料などを運ぶ道具。弥生時代から使用され,静岡県登呂遺跡からも出土した。

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