水稲作に用いる農具の一種。湿田で刈り取った稲を数把のせて畔(あぜ)に運んだり、苗代からとった苗を運んだり、あるいは水田の代掻(しろか)きに使う。苗舟(なえぶね)、代掻き田舟ともよぶ。いずれも綱をつけて引くか、把手(とって)をつけて押して使用する小形のもので、木製である。
古代の田舟には2種ある。一つは舟形につくられた小形の丸木舟で、弥生(やよい)時代のものが静岡県山木(やまき)遺跡から発見されている。その二は平面隅丸(すみまる)長方形の大きな槽(ふね)の前後に2個ずつ棒状の把手をつくり出したもので、弥生時代のものが山木遺跡や静岡市曲金(まがりかね)遺跡から出土しており、古墳時代の類例断片が大阪府八尾(やお)市中田遺跡にみられる。容量は大きく、湿田に浮かべて滑らせるにもよく、把手を握って担うこともできる。形状が伊勢(いせ)の皇大(こうたい)神宮で八咫鏡(やたのかがみ)を奉安する御樋代(みひしろ)を納める御船代(みふなしろ)によく似ていることが指摘されている。
[木下 忠・小川直之]
稲刈りのときにも水を落とすことのできないような田(沼田)で,刈り取った稲が水にぬれないように乗せるもの。底の浅い箱のような形をしているが,稲を乗せてあぜまで運ぶのに便利なように,その底は箱の長手方向に少し湾曲させてつくられている。沼田の多い地方には必ずといってよいほどあったもので,現代になってもそのような地方では,かつての木製のものにかわって合成樹脂製のものが使われている。これの使用は古くまでさかのぼり,たとえば登呂の遺跡からも出土している。もともと稲作は湿田から始められたので,このようなくふうが早くからなされていたのである。
執筆者:堀尾 尚志
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