神無月(かんなづき)(旧暦10月)には,日本中の神々が出雲の出雲大社に集まるという伝えが平安時代からあるが,そのとき留守居をするという神がある。一般には,オカマサマあるいは荒神(こうじん),恵比須,大黒,亥子(いのこ)の神を留守神としているところが多く,これらの神は,家屋に定着した家の神である点で共通する。武蔵の総社である六所明神(大国魂神社)や信濃の諏訪明神(諏訪大社)など,各地の大社には,神の本体が蛇なので出雲に行かないという伝えがある。讃岐の金毘羅(こんぴら)権現(琴平宮)をはじめ,各地の金毘羅さまについても同じことをいう。蛇体の神とは大地の主の神の特色で,これらの神も,それぞれの土地の鎮護神である。出雲大社の神も大地の主の神で,神無月の神集いの伝えは,稲の収穫儀礼の一部として,稲を守護する神を土地の鎮護神が総括するような大地の主の信仰を基盤に成立しているらしい。家では家の神が大地の主の地位を占めていたのであろう。
→神送り・神迎え →神無月
執筆者:小島 瓔禮
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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