異化効果(読み)いかこうか(英語表記)Verfremdungseffekt

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

異化効果
いかこうか
Verfremdungseffekt

ドイツの劇作家 B.ブレヒトが提唱した演劇理論。ブレヒトはアリストテレス以来の西洋の伝統的な演劇を批判して叙事演劇を提唱し,それを実現する手段として異化効果の方法を用いた。たとえば,歌や踊り,プラカード,映像などの視覚的な手段によって,あるいは俳優が役を離れてその批判を行うことなどによって,観客は舞台上の出来事に対して感情的に同化することが妨げられるというもの。観客は舞台に対し知的な理解をするよう求められ,さらにブレヒトの追求する社会主義的な思想と結びつけられていく。こうした方法論は,ブレヒトの主宰したベルリーナー・アンサンブルが生んだ多くの名作とともに,世界的に知られるようになった。

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知恵蔵の解説

異化効果

劇作家ブレヒトが、1930年代にその演劇理論の中心をなす用語として使ってから一般化したことば。当たり前と思われる事柄を、見慣れない未知のものに変える趣向をいう。異化作用ともいい、同化作用の逆。ブレヒトは社会を変革する視点を強調し、観客が登場人物や物語に感情同化せず、距離をおいて批判的に観察するこの技法を自作に適用した。

(扇田昭彦 演劇評論家 / 2007年)

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デジタル大辞泉の解説

いか‐こうか〔イクワカウクワ〕【異化効果】

《〈ドイツ〉Verfremdungseffektブレヒトの演劇論用語。日常見慣れたものを未知の異様なものに見せる効果。ドラマの中の出来事を観客が距離をもって批判的に見られるようにするための方法の意に用いた。

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百科事典マイペディアの解説

異化効果【いかこうか】

ドイツの劇作家ブレヒトが演劇の手法として用いた用語で,ドイツ語ではVerfremdungseffekt。対象を異常に見せてきわだたせる手法をいい,ロシア・フォルマリズムの用語〈異化ostranenije〉にヒントを得たという造語。すでに知っていると思われているものを未知のものに変えて,驚きを生み出すことは文学においては古くから行われているが,ブレヒトはそれを演劇だけでなく,社会的な認識の行為として,世界の変革と結びつけた。ブレヒトの演劇において俳優は役柄に〈同化〉するのではなく,常に距離をとって批判的であることを要求された。

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大辞林 第三版の解説

いかこうか【異化効果】

演劇用語。ある事物からその特性であると一般に認知されている部分をとり除くと、その事物が未知の異様なものに見えるという効果。ブレヒトの用語。

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世界大百科事典内の異化効果の言及

【異化】より

…生物学(〈同化作用〉の項目を参照),心理学でもこう呼ばれる現象があるが,ここでは文芸的な術語だけを扱う。本来はブレヒトが演劇で用いた〈異化効果Verfremdungseffekt〉に由来する。英語でalienation,フランス語でdistanciation,中国語では間離化,陌生化とも訳されているが,語義からいえば作品の対象をきわだたせ,異様(常)にみせる手続をいう。…

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