癜風菌(マラセチア・ファーファー)による皮膚の真菌症です。
癜風菌は皮膚の常在菌で、体幹などのいわゆる
肥満なども誘因になり、ステロイド薬を内服していたり、内分泌疾患がある患者さんに合併することもありますが、基本的には汗かきの元気な人に生じる皮膚病です。頭部や顔面の癜風菌は、脂漏性皮膚炎との関連が注目されています。
小児から老人に発症しますが、20~40代の青壮年に好発し、男性にやや多くみられます。好発部位は背部、胸部、
色素異常の原因は完全にはわかっていませんが、露光部位に脱色素斑、非露光部に淡褐色斑が認められることが多く、顔面は白色癜風、腋窩は黒色癜風になることがよくあります。メスでこすると細かい鱗屑が明瞭になります。大きさは帽針頭大から、くっつき合って地図状の大きな局面になるものまでさまざまです。毛孔のところに小脱色素斑が多発することもあります。自覚症状はほとんどないか、あっても軽度のかゆみくらいです。発症初期、急性悪化時に軽度の浮腫、発赤を伴うことがあります。
確定診断は、
癜風菌に抗菌力のある外用薬を用いますが、抗菌域の広いイミダゾール系が最も使われています。広範囲で外用が難しい例ではイトラコナゾール(イトリゾール)を内服します。
2週間で菌は陰性化することが多いのですが、治ったあとの色素沈着、色素脱失などの色素異常は長期間残り、これに対する有効な治療法はありません。また皮膚の常在菌であるため、再発率が極めて高いのが問題です。
あまり自覚症状のない色素異常では本症が疑われます。早期治療が重要です。皮膚科専門医を受診してください。また、白癬などの皮膚真菌症と違い、ほかの人へ感染することはほとんどありません。
加藤 卓朗
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
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癜風菌という一種のカビ(真菌)の寄生によっておこる皮膚病で、俗に黒なまずという。青年や中年の男女の胸や背部に好発する。エンドウ豆大から指頭大の、多くは淡褐色で、皮膚面から盛り上がらない円形の斑(はん)を生じ、これが連なって不規則形、地図状の病変をつくる。色の黒い人では病変部がかえって淡くみえることがある。病変の表面をこすると米糠(こめぬか)様の落屑(らくせつ)を認め、その中に顕微鏡検査によって癜風菌が証明される。治療としては種々の抗真菌外用剤が有効であるが、再発することが多く、ことに夏季に増悪する。
[野波英一郎]
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…真菌が主として表皮の最表層ともいえる角質層に感染する浅在性皮膚真菌症と,真皮内に菌が侵入し増殖して発症する深在性皮膚真菌症に二大別することができる。日本では前者が圧倒的に頻度が高く,皮膚糸状菌症,皮膚カンジダ症,癜風(でんぷう)が代表的である。後者にはスポロトリコーシス,クロモミコーシス,皮膚アスペルギルス症,皮膚クリプトコックス症などがある。…
※「癜風」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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