発光器官(読み)はっこうきかん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「発光器官」の意味・わかりやすい解説

発光器官
はっこうきかん

生物発光を行う器官効果器一種で、発光器ともいう。発光生物であっても、発光物質を体外に分泌して発光するものは特別の発光器をもたない。体内発光するものには、光学的な付属器官を備えたりっぱな発光器をもつものがある。ホタルの発光器は、透明なクチクラ層、その下の顆粒(かりゅう)に富んだ発光細胞層、白色反射層からできている。発光細胞層には、光の点滅を制御する神経繊維と発光に必要な酸素を供給する気管が入り込んでいる。ホウネンエソのような魚やホタルイカなどの発光器には、発光体、反射層、レンズのほかに色フィルターも備えた目のような構造をしたものがある。これらの発する赤や紫の光の色は色フィルターの色による。生物発光には自らのつくる物質により発光する場合(一次発光)のほか、共生する発光細菌の光を利用する場合(二次発光)もある。二次発光の場合も、シャッターなどで遮ることにより光の点滅ができる場合がある。

村上 彰]


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改訂新版 世界大百科事典 「発光器官」の意味・わかりやすい解説

発光器官 (はっこうきかん)
luminous organ

発光動物が光を発するための特別な組織。発光器はホタルのように発光細胞を備えて自己発光するものと,マツカサウオのように発光バクテリアを共生させて発光する型がある。ホタルの発光器は発光細胞が細かく枝分れした気管と神経の働きによりきわめて効率の高いL-L反応が進み光を発する。この光は反射細胞層により反射され色素を欠いたクチクラの腹板を通し外側へ発せられる。ホタルの発光明滅は神経の調節や反応生成物による強い阻害作用の結果生じると考えられている。ウミボタルは数本の分泌腺から発光液を放出し,ヤコウチュウウミサボテンツバサゴカイ,発光植物などは体表に発光細胞があり,特に発光器と呼ばれる構造は存在しない。発光器の形と数は種特異的であり,同種間のコミュニケーション,威嚇,餌の誘引などに大きな役割を果たしている。
生物発光
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「発光器官」の意味・わかりやすい解説

発光器官
はっこうきかん
luminous organ

生物発光のために特殊に分化した器官。単細胞動物 (ヤコウチュウなど) の場合は器官と名づけられないが,多細胞動物 (ウミサボテンなど) の場合でも発光細胞が体表面に分布しているので,やはり発光器官とはいえない場合もある。節足動物 (ホタルなど) の場合には,中胚葉起源の顆粒に富んだ発光細胞,その下層の尿酸塩結晶を含む反射細胞,体表面の透明なクチクラ層,発光細胞に伸びている気管とが発光器官を構成し,一般に体表に分布している。しかしある種のものでは,体の深部に分布し,反射を利用した間接照明を行うようなものもあるといわれているし,神経による支配を受けるものもある。

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世界大百科事典(旧版)内の発光器官の言及

【深海魚】より

…一般に海洋の水深200m以深に生息する魚類の総称で,夜間表層に浮上する種も多い(イラスト,イラスト)。海洋の150~200m以深の層は,光合成に必要な光量が十分でなく植物プランクトンや海藻は生育できない。したがって深海魚はすべて動物食性である。深海環境を特徴づけるものとして,光が少ないかまたはほとんどないこと,低水温,高水圧,餌料生物のきわめて少ないことなどがあげられるが,これらの条件に適応するためにいろいろに変わった形態や生態を示す魚が多い。…

※「発光器官」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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