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百合若 ゆりわか

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

百合若
ゆりわか

九州地方をはじめ全国的に伝承されている説話の主人公。伝承地によって話に異同があり,壱岐島に伝わるものでは桃から生れた百合若が鬼ヶ島に鬼退治に行き,帰りが遅くなったため彼を知る者はすでに世になく,人々の信を得られなかったが,幸いに百合若しか乗りこなせないという馬が国王の馬のなかにあって,これに乗ってみせたためにあかしがたち,晴れて国王の娘と結ばれるというもの。また沖永良部島に伝わるものは,家臣の悪計により無人島置去りにされた百合若が,沖を通りかかった船に助けられて故郷へ帰り,苦心の末,機会を得て裏切り者を射殺し,捕われていた妻を救い出して,再びむつまじく暮したというものである。この説話を題材として,のちに『百合若大臣』などの幸若舞,歌舞伎脚本の「百合若物」が生れた。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

百合若
ゆりわか

伝説および語物の主人公。幸若(こうわか)や説経の「百合若大臣」の英雄として活躍し、のちには歌舞伎(かぶき)、浄瑠璃(じょうるり)から地方の踊り歌にまで脚色されている。嵯峨(さが)天皇のときに長谷(はせ)観音の申し子として生まれた百合若は、蒙古(もうこ)襲来に出陣し大勝した。帰途に玄海の孤島で一休みする間に、家臣の別府兄弟の悪計で置き去りにされる。兄弟は帰国後に百合若の死を告げ、九州の国司となる。しかし、百合若の形見に残した緑丸という鷹(たか)が孤島にきて、妻との連絡もつき、孤島に漂着した釣り人の舟で帰国できる。そして九州支配の別府兄弟を成敗し、宇佐八幡(はちまん)宮を修営して日本国の将軍となる。この伝説は、本来山口県以南に分布していて、九州を本貫とする説話が、諸芸能によって全国に分布するようになった、と思われる。伝説には諸種あって、たとえば百合若の足跡石という巨石を伝えたり、別称ダイダラボウシの名をもって祀(まつ)られた百合若塚などもある。いずれも巨人伝説を踏襲するものである。そのほか、緑丸の遺跡という鷹に関したものも多く、鷹を神使とする民俗の参与が考えられる。また、壱岐(いき)島にはイチジョーという巫女(みこ)が、天台やボサの祭りの毎月28日に神楽(かぐら)として語る「百合若説経」と称するものがある。50センチメートルほどの竹2本を、黒塗りの弓とユリという曲物を置いてたたきながら行う。病人祈祷(きとう)にも同じことをする。百合若以外も語ったらしいが、いまはほかに残っていない。筋(すじ)も他の百合若伝説とほぼ同様で、桃の中から生まれたり、壱岐島の鬼を退治したり、桃太郎の話との混交はあるが、宇佐八幡と柞原(ゆすはら)八幡の本地(ほんじ)物になっている。百合若説話の成立には、宇佐の海人(あま)部の伝承と八幡信仰が注目される。[渡邊昭五]

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世界大百科事典内の百合若の言及

【百合若大臣】より

…上演記録の初見は,《言継卿記》天文20年(1551)の記事である。長谷観音の申し子百合若は,神仏の加護により蒙古(むくり)との合戦に勝った。凱旋の途中,玄界島に立ち寄り疲れをいやしたが,家臣別府兄弟が逆心を起こし,島に置き去りにされた。…

※「百合若」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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