益税(読み)エキゼイ

デジタル大辞泉 「益税」の意味・読み・例文・類語

えき‐ぜい【益税】

消費者が支払った消費税うち国庫に納入されず、合法的に事業者手元に残る部分。事業者免税点制度や簡易課税制度により発生

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「益税」の意味・わかりやすい解説

益税
えきぜい

消費者が支払った消費税が国や地方自治体に納められず、事業者の手元に合法的に残ること。中小事業者に対する特例として、売上高5000万円以下の事業者の納税事務負担を軽くする「簡易課税制度」や、課税売上高が1000万円以下の事業者の消費税を免除する「事業者免税点制度」で、益税が発生する。たとえば簡易課税制度では、売上高に一定率(みなし仕入れ率)をかけて仕入額を計算するため、実際の仕入額よりも計算上の仕入額が大きくなることが多く、納める消費税額が小さくなる。また、事業者免税点制度が適用される事業者が、商品を販売する際に、徴収する必要がないのに消費税率分を上乗せして販売した場合などにも益税が生じる。会計検査院の2010年(平成22)の調査では、中小事業者の約8割で消費税の一部が手元に残る益税が発生していた。政府は2014年4月、消費税率5%時の簡易課税制度で1000億円、事業者免税点制度で2000億円のあわせて3000億円の益税があったが、消費税率8%時の益税は簡易課税制度で1500億円、事業者免税点制度で3500億円の合計5000億円にのぼるとの試算を公表した。

 1989年(平成1)の消費税導入時には益税の年間規模は数兆円単位とされ、消費税制への不信を高めかねない問題とされた。このため政府は段階的な益税縮小に努めており、消費税導入当初、簡易課税制度の対象は課税売上高5億円以下の中小事業者であったが、1991年に4億円以下、1997年に2億円以下、2004年には5000万円以下へと、順次対象を狭めた。みなし仕入れ率も当初は90%と80%の2段階であったが、1991年に4段階(90、80、70、60%)、1997年に5段階(50%を追加)に広げた。2015年4月からは、金融保険業のみなし仕入れ率を60%から50%へ引き下げると同時に、初めて40%のみなし仕入れ率を導入(6段階みなし仕入れ率制度)して不動産業に適用し、業者の手元に残る益税を減らす方針である。しかし、簡易課税制度などが残ったままでは益税を根本的には解消できないとの批判もあり、ヨーロッパ連合EU)のように、商品価格や仕入先に払った税額などが明記された納品書(インボイス)を導入する課税方式に統一すべきであるとの主張が出ている。

[編集部]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「益税」の意味・わかりやすい解説

益税
えきぜい

消費者から預かった税金を国庫に納入することなく,事業者の利益とすること。1989年に導入された消費税には,中小規模の事業者に対する特例措置として,事業者免税点制度と簡易課税制度が設けられており,これらによって,消費税全額が合法的に事業者の利益となったり,1~2割しか納付せずにすむことが起こる。益税の額は,最大限に見積もって推計で約 1兆円以上に上るといわれ,消費税にまつわる不透明感を生む要因となっている。1991年10月には益税の解消と非課税範囲の拡大を中心とした消費税の改正法が施行されたが,根本的な欠陥是正とはなっていない。

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百科事典マイペディア 「益税」の意味・わかりやすい解説

益税【えきぜい】

簡易課税制度を利用することによって,国に納付すべき消費税が少なくてすむ差額分のこと。課税売上高が3000万円超4億円以下の事業者に適応される同制度では,仕入れなどの経費率を卸売業は90%,小売業は80%等とみなして消費税の納入額を計算する。そのため,実際の仕入率が〈みなし税率〉より低い場合,その差額分が中小業者の手元に残り益税となる。1994年12月の改正消費税法により,簡易課税制度を適用する課税売上高上限を2億円に引き下げ,限界控除制度を廃止するなどの改正が行われ,1997年4月から実施された。

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